ジャガー・XKSS

ジャガーXKSS：伝説のスポーツカー

ジャガーXKSSは、イギリスの自動車メーカー、ジャガーが1957年に発表した2座席のスポーツカーです。その希少性と歴史的背景から、クラシックカー愛好家にとって非常に魅力的なモデルとなっています。

レーシングカーからの進化

XKSSは、1954年から製造されていたレーシングカー、Dタイプのロードゴーイングバージョンとして開発されました。Dタイプの優れたメカニズムを受け継ぎながら、一般道路での走行を快適にするための改良が施されています。

具体的には、Dタイプの特徴的なフィンや、運転席と助手席を隔てていたフレームが取り除かれ、助手席側にもドアが設置されました。また、トランクルームは設置されませんでしたが、テール部分にはクロームメッキのトランクキャリアが備え付けられました。さらに、フロントウインドウとソフトトップが追加され、革張りのシートを採用することで内装の快適性が向上しています。

不運な生産中止と希少性

しかし、XKSSの生産は長くは続きませんでした。1957年2月12日夜に発生したブラウンズレイン工場の火災により、生産設備や完成車両、部品の大半が焼失。結果として、当初予定されていた25台に対し、わずか16台（Dタイプからの改造車2台を含む）しか生産されませんでした。この非常に少ない生産台数に加え、著名な俳優スティーブ・マックィーンも所有していたという事実は、XKSSの稀少性をさらに高めています。現在、マックィーン所有のXKSSはロサンゼルスのピーターセン・ミュージアムに収蔵されています。

伝説の復活：追加生産

XKSSの稀少性と高い人気を受け、2016年にジャガーは驚くべき発表を行いました。オリジナルスペックを忠実に再現したXKSSの追加生産です。火災で焼失した分、残りの9台の生産が計画されました。

今回の生産は、既存の車両をベースにするのではなく、設計図を元に、シャシーからボディ、エンジンに至るまで全てを新規に製造するという、非常に本格的な取り組みです。設計図が存在しないパーツについては、現存するXKSSをスキャンして再現するなど、細部に至るまでこだわり抜いた復刻となっています。価格は約100万ポンドと高額でしたが、それでもXKSSの新車として販売され、大きな話題となりました。

XKSSの遺産

XKSSは、その希少性、歴史、そしてジャガーの技術力の高さを示す象徴的なモデルです。レーシングカーの血を受け継ぎながら、一般道路での走行にも適したスポーツカーとして、今日も多くの愛好家を魅了し続けています。その美しいデザインと稀少性から、今後もクラシックカー市場において高い価値を保ち続けることは間違いありません。ジャガーの歴史において、重要な1ページを刻んだモデルと言えるでしょう。

もう一度検索