ジャスパーウェア

ジャスパーウェア：ウェッジウッドが生み出した永遠の傑作

ジャスパーウェアは、18世紀のイギリスを代表する陶磁器メーカー、ウェッジウッド社の創設者であるジョサイア・ウェッジウッドによって開発された炻器（ストーンウェア）です。1774年、4年に及ぶ研究の末に完成したこの陶磁器は、古代ギリシャ・ローマ美術、特にカメオガラスをモチーフとした古典主義的なデザインが特徴です。

ウェッジウッドは、1790年にはこの技法を用いて「ポートランドの壺」を再現。この壺はジャスパーウェアの代表作として有名で、その精緻な細工と美しい色合いは多くの人々を虜にしました。ジャスパーウェアの登場は、それまで主流だったロココ様式の陶磁器を一掃するほどのインパクトを与え、ヨーロッパ中の陶磁器業界に大きな影響を与えました。多くの窯がジャスパーウェアの模倣品を作るほど、その人気は絶大だったのです。

ジャスパーウェアの種類と特徴

ジャスパーウェアは大きく分けて2種類あります。

1. ディップドカラー: 胎土に色素を含ませず、表面に青や緑などの色を施したものです。単色だけでなく、二色を組み合わせたものも存在します。非常に稀な例ではありますが、色付きの胎土に別の色を被せたものもあります。
2. ソリッドカラー: 胎土に色素を含ませたものです。現在では、こちらが主流となっています。

色彩の豊かさ

ジャスパーウェアは、その多彩な色も魅力の一つです。代表的な色には、以下のものがあります。

ペールブルー: 明るい青色で、「ウェッジウッドブルー」とも呼ばれるジャスパーウェアを代表する色です。現在ではソリッドカラーのみですが、生産量が一番多い色です。
ロイヤルブルー: 濃い青色。現在はディップドカラーのみ少量生産されています。
ポートランドブルー: くすんだ藍色。
セージグリーン: 明るい灰緑色。ペールブルーに次いで生産量が多いです。
グリーン: 濃い草色。ディップドカラーのみで、現在は生産されていません。
ティールグリーン: 青みがかった緑色。
トープ: 茶色。
ライトトープ: 象牙色に近い黄土色。非常に稀です。
イエロー: 薄い黄色。黒いレリーフが施されることが多いです。
プリムローズ: 薄い黄色。中国風デザインのシリーズによく用いられます。
ケーン: ややくすんだ黄色。
テラコッタ: レンガ色。1950年代後半に多く作られました。
ライラック: 藤色。
クリムゾン: 濃いえんじ色。生産期間が短く、希少です。
ブラック: 黒色。
グレー: 灰色。
ホワイト: ややくすんだ白色。レリーフによく使用されます。
ワインカラー: 近年、クリムゾンのソリッドカラー版として復元されました。

デザインと装飾技法

ジャスパーウェアのデザインは、古典主義的で簡潔な均衡感を重視しており、過度な装飾はありません。ギリシャ・ローマの器物の形状や意匠をそのまま取り入れたものが多く、中国の陶[[磁器]]を模倣したものも見られます。ジョン・フラックスマンやレディー・ティンプルトンなど、著名なデザイナーが携わった作品も数多く存在します。

代表的な装飾技法

ジャスパーウェアの装飾技法には、以下のものがあります。

レリーフ: 本体とは別の色のレリーフ（貼花）を貼り付けるのが最も一般的です。ギリシャ・ローマ、エジプト、中国のモチーフなどが用いられています。
型打ち、浮彫り: アカンサス文などの模様を型打ちしたり、弦文を浮彫りで施したりすることもあります。
金彩: 稀に金彩が施されることがあります。ブラックのジャスパーウェアによく見られます。
スグラフィート: 表面を削って模様を作る技法です。
* 練上: 二色以上の胎土を練り混ぜて模様を作る技法です。

ジャスパーウェアの用途

ジャスパーウェアは、その堅牢性と美しさから、幅広い用途に使用されてきました。壺、花器、茶器、皿、ボウル、ジャグ、ボトル、時計、フィギュアリン、植木鉢、装身具、タイルなど、その種類は多岐に渡ります。近年でも、その高い装飾性と実用性を兼ね備えた特性から、現代の生活空間にも溶け込む様々な製品が作られています。

ジャスパーウェアの歴史的意義

ジャスパーウェアは発売直後から高い評価を受け、マイセンなどヨーロッパの著名な陶磁器メーカーが模倣品を製作するほどでした。明治以降には日本でも製造されるようになり、現在に至るまで世界中で愛され続けています。ウェッジウッド社の象徴であり、主力商品として、その歴史と伝統を受け継ぎながら、現代においても広く人々に親しまれる傑作です。

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