ジャック (チャクマヒヒ)

信号手を務めたヒヒ、ジャック

ジャックは、生年月日不明ながら1890年に生涯を閉じたチャクマヒヒです。南アフリカ、ポートエリザベスのヴィテンヘイズ駅で、9年間もの間、鉄道の信号手として働き、その功績は広く知られています。彼は、記録に残る唯一の信号手を務めたヒヒとして、その名を歴史に刻んでいます。

ワイルドとの出会い

ジャックとジェイムズ・エドウィン・ワイルドの出会いが、ジャックの運命を大きく変えました。ヴィテンヘイズ駅の駅員だったワイルドは、不慮の事故で両足を失ってしまいます。以前は駅の警備員として働いていましたが、この事故により信号手の仕事に就くことになりました。ある日、ワイルドは市場で、荷車を押して働く若いヒヒ、ジャックに出会います。その賢そうな姿を見たワイルドは、きっと自分の助けになってくれるだろうと考え、ジャックを飼い主から買い取りました。

信号手としての才能

ワイルドの期待通り、ジャックは非常に賢いヒヒでした。水を汲んだり、小屋を掃除したりといった雑用をすぐに覚えただけでなく、走行中の列車に鍵を渡すことも覚えました。さらに驚くべきことに、ワイルドを車椅子に乗せて、待機場所の小屋から信号操作室まで運ぶこともできるようになったのです。ジャックは日々賢さを増し、ついには信号機をレバーで動かせるまでになりました。最初はワイルドの指示に従って信号機を動かしていましたが、やがて自分で判断して動かすこともできるようになったのです。ジャックの働きによって、ワイルドはほとんど自分で動かなくても仕事ができるようになりました。

正式な鉄道員として

ジャックの働きぶりは高く評価され、正式な鉄道員として認められることになりました。給料として一日2￠と、土曜日にはビール半分が与えられました。これは、彼の貢献に対する正当な評価と言えるでしょう。

ジャックの死とその後

1890年、ジャックは結核に感染し、この世を去りました。ワイルドは、良き友人であり、仕事仲間でもあったジャックの死を深く悲しんだと言われています。ジャックは信号操作室の脇に埋葬され、その功績は今も語り継がれています。現在、ジャックの頭部はオールバニー博物館に展示されており、彼の存在を今に伝えています。

南アフリカには、ジャック以外にも信号手として働いたサルがいたとされています。「ジョック」という名で、プレトリアの近くで働いていたという記録も残っています。

参考文献

ロルフ・ハリス著、松井みどり訳『動物ウソ?ホントの話』、新潮社、1999年1月 ISBN 978-4102183113

外部リンク

Jack, the baboon signalman

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