ジャック・クレマン

ジャック・クレマンとアンリ3世の暗殺事件

ジャック・クレマン（Jacques Clément）は1567年にブルゴーニュで生まれたドミニコ会の修道士で、1589年にフランス国王アンリ3世を暗殺したことで歴史に名を刻むことになります。この暗殺は、当時のフランスにおけるカトリックとプロテスタント（ユグノー）との間に起きていた激しい宗教戦争に深く結びついています。

1688年12月23日、アンリ3世は当時強大な影響力を誇っていたカトリック同盟のリーダー、ギーズ公アンリを暗殺しました。この出来事はカトリック陣営の怒りを買い、パリ大学やパリ高等法院はアンリ3世を国王として認めないと宣言しました。ローマ教皇がアンリ3世を破門するなど、政治的な混乱が続く中で、アンリ3世はユグノー陣営のナバラ王アンリと手を組むことになります。これによって、アンリ3世に対するカトリック教徒の敵意が一層高まっていきました。

1589年8月1日の朝、ジャック・クレマンはサン＝クルーに滞在しているアンリ3世に謁見を求めました。寝床にいた国王はこれを許可し、二人は朝8時に面会します。クレマンは、国王に対して手紙を手渡しましたが、その直後、隠し持っていた短刀を取り出して急にアンリ3世に襲いかかり、背中の脾臓を突き刺しました。

この突発的な攻撃に対して、クレマンは直ちに護衛によって殺され、その遺体は手荒に扱われました。事件の背後にある意図は謎のままでしたが、アンリ3世は重傷を負い、死の床にあった彼はナバラ王アンリを呼び寄せ、その王位を託けました。

翌日の8月2日午前3時、アンリ3世はその生涯を閉じ、これによりヴァロワ朝は断絶します。クレマンの遺体は、カトリックの聖遺物として扱われるのを避けるために焼かれ、灰にされました。

その後、ナバラ王アンリはアンリ4世として即位し、ブルボン朝の幕開けとなります。クレマンによる暗殺はフランスの歴史に大きな影響を与え、後の政治状況の変容に寄与しました。このような事件が起こった背景には、深刻な宗教的対立とそれに基づく政治的な争奪があったことを忘れてはなりません。

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