ジャック・マクダフ

ジャック・マクダフ（Jack McDuff）は、1926年9月17日にアメリカ合衆国イリノイ州で生まれた、20世紀後半を代表するジャズ・オルガン奏者です。特に1960年代のソウル・ジャズムーブメントにおいて、その中心的プレイヤーの一人として重要な役割を果たしました。

音楽の道に入った当初、彼はピアノを学んでいましたが、1957年にオルガンへと転向し、そのキャリアの方向性を確立しました。1960年には名門プレスティッジ・レコードと契約を結び、自身の名を冠したリーダーアルバムを発表。ここからオルガン奏者としての本格的な活動が始まりました。このプレスティッジ時代には、後のジャズ界で名を馳せることになる若手プレイヤーたちを自身のバンドに迎え入れ、育成に貢献しました。特にギタリストのグラント・グリーンやジョージ・ベンソンは、マクダフの元で腕を磨き、大きく飛躍していきました。ジョージ・ベンソンの記念すべきデビュー作にあたる1964年のアルバム『ザ・ニュー・ボス・ギター』にも、マクダフはオルガン奏者として全面的に参加し、彼の成功を力強く後押ししています。

プレスティッジでの活動を経て、1966年にはアトランティック・レコードへ移籍しました。これを皮切りに、彼はCadet/GRT、ブルーノート、コンコードなど、様々なレーベルから精力的に作品を発表し続けます。ブルーノートから1970年にリリースされた『To Seek A New Home』は、当時としては珍しく、イギリスへ渡り現地のミュージシャンたちと制作された意欲作として知られています。1970年代に入ると、時代背景の変化もあり、オルガンに加えてエレクトリックピアノなどのキーボードも演奏するようになりますが、1980年代後半からは再びオルガンを中心としたスタイルへと回帰しました。

長年にわたるキャリアの中で、彼は数多くのジャズメンと共演しました。プレスティッジ時代の盟友であるジーン・アモンズやソニー・スティットといったサックス奏者、レッド・ホロウェイ、そして前述のグラント・グリーン、ジョージ・ベンソンといったギタリストたちとのセッションは特に有名です。1991年にはコンコード・レコードからアルバム『Color Me Blue』を発表し、かつて自身のバンドから巣立ったジョージ・ベンソンと久しぶりに共演を果たしました。この再会セッションは、多くのジャズファンの間で大きな話題となりました。

晩年まで精力的に活動を続け、2000年1月には日本の東京で公演を行いました。この来日公演では、日本の著名なオルガン奏者であるKANKAWAとの共演も実現しました。この時のライブ演奏は録音され、結果的に彼のキャリアにおける最後の公式録音として残されることとなりました。

ジャック・マクダフは、その温かくファンキーなオルガンサウンドで、ソウル・ジャズというジャンルの発展に貢献し、多くのミュージシャンやリスナーに影響を与えました。2001年1月23日、ミネアポリスにて心不全のため、74歳で惜しまれつつ亡くなりました。

彼の残した膨大なディスコグラフィは、オルガン・ジャズの豊かさを示す貴重な記録となっています。

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