ジャック・ヴィルヌーヴSr.

ジャック・ジョセフ・ヴィルヌーヴ：兄ジル・ヴィルヌーヴの影に隠れた才能

ジャック・ジョセフ・ヴィルヌーヴは、1953年、カナダはケベック州で生まれました。兄は、F1界のスターとして知られるジル・ヴィルヌーヴです。3歳年上の兄と同様に、幼い頃からスノーモービルレースで才能を開花させました。

ジャックは、その卓越したドライビングテクニックで、北米のフォーミュラ・アトランティック選手権において、1980年と1981年にチャンピオンの座に輝きました。攻撃的なドライビングスタイルは、兄ジルと比較されることも多く、高い評価を得ていました。

しかし、F1への挑戦は、容易ではありませんでした。1981年にはアロウズから、1983年にはRAMからカナダグランプリにスポット参戦したものの、いずれも予選落ちに終わりました。F1での成功を掴むことはできませんでしたが、彼のレーシングキャリアはそこで終わらなかったのです。

その後、ジャックは北米のレースシーンを主戦場として活躍します。1982年から参戦したカナディアン-アメリカン・チャレンジカップシリーズでは、1983年に5000ccクラスで年間チャンピオンを獲得。さらに同年のル・マン24時間レースにも出場しました。

1984年から1986年にかけては、北米オープンホイールカーレースの最高峰であるCARTシリーズに参戦。1985年にはロード・アメリカ200で優勝を飾り、カナダ人ドライバーとしてCART初優勝という偉業を達成しました。この他にも、ポルシェカップやIMSAなどにも参戦し、1992年にはCARTにスポット参戦するなど、精力的に活動を続けました。フォーミュラ・アトランティックのゲストドライバーとしても参戦し、優勝を収めたこともあります。

四輪レースと並行して、彼はウィンターシーズンにはスノーモービルレースにも参戦していました。その才能は、四輪レースでの活躍と同じくらい目覚ましく、アメリカ・ウィスコンシン州で開催される「ワールドチャンピオンシップ・スノーモービル・ダービー」では、1980年、1982年、1986年の3度の優勝を収め、最多タイ記録を樹立しました。ちなみに、兄のジルも1974年に同大会で優勝しています。

これらの輝かしい功績が認められ、2001年にはカナダのモータースポーツ殿堂入りを果たしました。50歳を過ぎても現役レーサーとして活動を続けていましたが、2008年のスノーモービル・ダービーで事故に遭い、脊椎損傷と骨盤骨折の重傷を負ってしまいました。

ジャック・ジョセフ・ヴィルヌーヴは、兄の影に隠れがちですが、その実力は本物でした。F1での成功は叶いませんでしたが、彼は北米のモータースポーツ界に大きな足跡を残した、優れたレーサーと言えるでしょう。彼の功績は、カナダのモータースポーツ史に永遠に刻まれています。

もう一度検索