ジャッザール・パシャ

ジャッザール・パシャとその影響力

生涯と経歴

ジャッザール・パシャ（Jezzar Paşa）は、オスマン帝国の重要な支配者として知られています。彼は1720年または1708年に、当時オスマン帝国の領土だったボスニアのストラツ（Stolac）で生まれました。元々はキリスト教徒でしたが、後に改宗してエジプトの有力なマムルーク、アリ・ベイの下で働くことになります。

1768年、露土戦争が勃発すると、彼の主人アリ・ベイはアッコを支配していたザーヒル・ウマルと共にオスマン帝国への反乱を試みましたが、これは失敗に終わり、アリ・ベイは殺されました。この混乱の中でジャッザール・パシャは、自らの機会を生かし、1775年に空白となったシドン地区の支配権を獲得しました。これにより、彼はアッコに本拠を置き、知名度を高めていきました。

「ジャッザール」という名は、アラビア語で「屠殺人」を意味し、彼の残虐さと強権的な支配スタイルに由来しています。彼の行動には少なからぬ恐怖が伴い、ジャッザール・パシャの側には常に移動式の絞首台がついて回ったと言われています。

アッコ防衛戦

1799年、ジャッザール・パシャがその名を広めたのは、ナポレオンのアッコ包囲戦における抵抗によるものでした。ナポレオンはエジプトを占領した後、オスマン帝国の支配下にあったシリアおよびパレスチナへの侵攻を開始しました。彼の指揮するフランス軍はアリーシュやヤッファを占領し、野戦ではオスマン軍に勝利を収めましたが、アッコに関しては屈服させることができませんでした。

フランス軍は伝染病や補給不足に苦しみながら、数ヶ月にわたりアッコに対して攻撃を仕掛けましたが、ジャッザール・パシャは巧妙な防衛策により、これを防ぎ続けることに成功しました。ナポレオンと彼の敵対者であるシハーブ家のバシールは互いに支援を求めましたが、バシールは中立を保ちました。しかし最終的に、ナポレオンは撤退を余儀なくされ、彼の東方征服の試みは失敗に終わりました。

建築業績

ジャッザール・パシャはまた、アッコにおける多数の建築プロジェクトでも知られています。彼の治世下では、ダマスカスのユダヤ人財政顧問ハイーム・ファールヒーの協力を得て、都市のインフラが大きく整備されました。具体的には、都市城壁の強化、近郊から水を引く水道の改修、さらには大規模なトルコ式浴場の建設が行われました。

特に注目すべきは、ジャッザール・モスクの建設です。このモスクは十字軍時代の教会の上に建立され、古代ローマやビザンチンの円柱が使われています。また、モスク内にはイスラム教の宗教学校も併設され、後には宗教法廷としても機能しました。ジャッザール・パシャ自身やその養子スレイマン・パシャは、モスクの中庭に埋葬されています。

評価と影響

ジャッザール・パシャの支配時代は歴史的に重要であり、彼の行動は現代に至るまで多くの議論を呼んでいます。彼はその強権支配を通じてアッコを防衛しただけでなく、都市の発展にも寄与しました。これらの業績を通じて、彼はオスマン帝国の影響力を強化し、歴史に名を刻む存在となったのです。

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