ジャネット・マクドナルド

ジャネット・マクドナルド

ジャネット・マクドナルド（Jeanette MacDonald）は、1903年6月18日にアメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれた、才能あふれる女優であり、歌手です。本名をジャネット・アンナ・マクドナルドといい、その華やかな容姿と美しい歌声で、特にハリウッドの黄金期である戦前において、ミュージカル映画の分野で揺るぎない地位を確立しました。

幼少の頃から、ジャネットは声楽とダンスの専門的な訓練を受け、舞台の世界に強い憧れを抱いていました。1919年には、ブロードウェイの舞台でプロフェッショナルとしてのキャリアをスタートさせます。1920年代を通じて、彼女は数多くのミュージカル作品に出演し、パフォーマーとしての経験と技術を磨き続けました。

映画界への進出は、1929年のパラマウント映画『ラヴ・パレード』によって実現しました。この作品はエルンスト・ルビッチが監督し、当時すでに人気スターであったモーリス・シュヴァリエと共演したものです。ジャネットは初の映画出演ながら、その魅力的な歌声と表現力で観客を魅了し、瞬く間にパラマウント映画を代表する看板スターの一人となりました。モーリス・シュヴァヴァリエとは、その後も合計4本の映画で共演し、スクリーン上で軽妙なやり取りを見せています。

1933年、彼女はメトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）へと移籍し、キャリアの新たな段階を迎えます。そして、1935年から始まったバリトン歌手ネルソン・エディとの共演は、彼女の、そしてMGMのミュージカル映画史において、まさに黄金期を築きました。この二人は、『浮かれ姫君』（1935年）、『ローズ・マリイ』（1936年）、『君若き頃』（1937年）、『ニュウ・ムウン』（1940年）など、合計8本もの大ヒット作を生み出しました。二人の絶妙な歌声のハーモニーとロマンティックな演技は観客を熱狂させ、「歌う恋人たち」として世界中で知られるようになりました。このネルソン・エディとのコンビは、ジャネット・マクドナルドの人気を最高潮へと押し上げました。私生活では、この絶頂期の1937年に俳優のジーン・レイモンドと結婚しています。

MGMを一時的に離れた後も、彼女の音楽への情熱は尽きることがありませんでした。1943年には、カナダのモントリオールにて、シャルル・グノー作曲の有名なオペラ『ロメオとジュリエット』に出演し、オペラ歌手としてもその実力を示しました。1950年代以降は、かつてのような主演映画への出演は減ったものの、レコーディング活動や舞台公演、そしてテレビ番組への出演などを精力的にこなし、多様なメディアを通じてエンターテイナーとしての活動を継続しました。

彼女の豊かな歌声と華やかな存在感は、数多くの映画作品で遺憾なく発揮されました。以下に主な出演作品を挙げます。

『ラヴ・パレード』 (The Love Parade) (1929) [パラマウント]
『放浪の王者』 (The Vagabond King) (1930) [パラマウント]
『極楽島満員』 (Let's Go Native) (1930) [パラマウント]
『モンテ・カルロ』 (Monte Carlo) (1930) [パラマウント]
『魅惑を賭けて』 (The Lottery Bride) (1930) [ユナイテッド・アーティスツ]
『盗まれた接吻』 (Oh, for a Man) (1930) [フォックス]
『女に賭けるな』 (Don't Bet on Women) (1931) [フォックス]
『アナベル情事』 (Annabelle's Affairs) (1931) [フォックス]
『君とひととき』 (One Hour with You) (1932) [パラマウント]
『今晩は愛して頂戴ナ』 (Love Me Tonight) (1932) [パラマウント]
『猫と提琴』 (The Cat and the Fiddle) (1934) [MGM]
『メリィ・ウィドウ』 (The Merry Widow) (1934) [MGM]
『浮かれ姫君』 (Naughty Marietta) (1935) [MGM]
『ローズ・マリイ』 (Rose Marie) (1936) [MGM]
『桑港』 (San Francisco) (1936) [MGM]
『君若き頃』 (Maytime) (1937) [MGM]
『歌ふ密使』 (The Firefly) (1937) [MGM]
『ポルカの歌姫』 (The Girl of the Golden West) (1938) [MGM]
Sweethearts (1938) [MGM] ※日本劇場未公開
Broadway Serenade (1939) [MGM] ※日本劇場未公開
『ニュウ・ムウン』 (New Moon) (1940) [MGM]
Bitter Sweet (1940) [MGM] ※日本劇場未公開
Smilin' Through (1941) [MGM] ※日本劇場未公開
I Married an Angel (1942) [MGM] ※日本劇場未公開
Cairo (1942) [MGM] ※日本劇場未公開
Follow the Boys (1944) [ユニバーサル] ※日本劇場未公開（ゲスト出演）
Three Daring Daughters (1948) [MGM] ※日本劇場未公開
『山荘物語』 (The Sun Comes Up) (1949) [MGM]

これらの作品は、ジャネット・マクドナルドがハリウッドの音楽映画において果たした貢献の大きさを物語っています。彼女は1965年1月14日、テキサス州ヒューストンのメソジスト病院にて、心臓まひのため惜しまれつつこの世を去りました。享年61歳でした。彼女の歌声とスクリーンでの輝きは、今なお多くの人々に記憶されています。

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