ジャパン・プロフェッショナル・ムエタイ・コミッティ
ジャパン・プロフェッショナル・ムエタイ・コミッティ（JPMC）は、日本国内におけるWBCムエタイ関連の活動をサポートし、WBCムエタイ公式ルールに則ったプロフェッショナル試合を統括する役割を担う組織です。その主な機能は、選手や関係者へのライセンス発行、そしてWBCムエタイのタイトルマッチや認定興行に対する承認業務です。既存の多くのキックボクシング団体とは異なり、JPMC自体が主催者として興行を開催することはありません。
この組織は、2008年10月1日をもって現在の名称に変更されました。それ以前は「ジャパン・プロフェッショナル・ムエタイ・コミッション」という名称でした。
JPMCが正式に発足する前には、WBCムエタイの日本におけるランキングを定める「WBCムエタイ日本ランキング委員会」が存在しました。この委員会は、WBCムエタイ本部からの要請を受け、2007年3月29日にマスコミ関係者を中心に都内で発足したものです。スポーツライターの布施鋼治氏が議長を務め、他の6名で構成されていました。委員会は定期的に日本のムエタイ選手のランキングを作成・発表し、その活動は2007年11月1日に発表された第3回ランキングまで続けられました。
JPMCの設立は、2008年2月12日にタイ・バンコクで行われた調印によって公式なものとなりました。WBCムエタイ会長のゴーヴィット・パックディーブーム氏とJPMC理事長の山根千抄氏の間で、JPMCが日本国内でWBCムエタイから正式に認可される唯一の組織であるという合意が形成されました。JPMC設立の背景には、日本のボクシング界において、世界戦を開催するためにローカル・コミッションである日本ボクシングコミッション（JBC）の存在が必要不可欠であるのと同様に、WBCムエタイの世界戦を行うためにも統括組織が必要であるという考えがありました。これは、WBCムエタイがWBCと並列の関係にあり、組織としての方針が共通していることに起因します。
しかし、設立当時、JBCとの関係性の問題などから、日本国内でWBCムエタイの世界戦（タイトルマッチ）を開催することは事実上不可能とされていました。また、JPMCが存在しない時期から、山本元気選手がロサンゼルスでWBCムエタイ世界王座に挑戦するなど、日本人選手が海外で世界戦を行ってきた経緯もあり、関係者からはJPMCの設立意義や存在価値を問う声も上がりました。
2008年3月3日、JPMCは「NPO法人申請中」であるとのプレスリリースを発表し、これに伴い「WBCムエタイ日本ランキング委員会」は解散しました。しかし、実際に東京都にNPO法人としての申請が行われたのは月末であり、審査期間中に「NPO法人（申請中）」と名乗ることは法令違反にあたるのではないかという指摘がなされました。
さらに、3月31日にはタイ国プロムエタイ協会のソムチャート・ジャルンワチャラウィット総裁が、JPMCの活動に対して強い遺憾の意を表明し、タイ国スポーツ局に対策を求める公式文書を提出するという事態に発展しました。総裁は、JPMCの活動を放置すれば、タイの国技であるムエタイの権威を損なう可能性があるとの懸念を示しました。
これに対しJPMCは、バンコクポスト紙にタイの観光スポーツ省大臣が「この新しい試みはタイにとって有益だ」とコメントした記事が掲載されたと発表しました。しかし、その後タイのスポーツ紙ムエサイアムが、観光スポーツ省大臣がバンコクポストの記事内容を否定したと報じました。大臣は、日本のプロモーターを名乗る女性との記念写真に応じただけであり、JPMCを一切認定した事実はないと明確に述べ、今後同様の誤解を招かないよう写真撮影にも注意が必要だと語りました。この問題は、タイの主要スポーツ紙が運営するインターネットニュースでも取り上げられ、波紋を広げました。
こうした混乱を受け、JPMCは2008年5月6日、3月に発表した設立挨拶文の内容を訂正しました。当初「日本の『全ての』プロのムエタイを統括する」とも解釈されかねない表現であったため、これを「WBCムエタイおよびJPMCに関する活動のみを統括する」という内容に修正しました。これは、タイ国プロムエタイ協会総裁の遺憾表明や公式文書提出という事態を招いた原因が、この誤解を招く表現にあったことを踏まえての対応でした。
同日、JPMC理事長の山根千抄氏は記者会見を開き、「混乱を招く文章だったことを深くお詫び申し上げる」と述べました。会見には、タイの有力プロモーターであるチューチャルーン・ラウィーアラムウェン氏（通称アンモー）も同席し、アンモー氏がWBCムエタイ会長の秘書と共にソムチャート総裁を訪問し、JPMC設立の経緯や活動内容を説明したことで「誤解は解けた」との認識を示しました。
JPMCは設立の理念として、組織の理事が格闘技興行とは直接的な利害関係のないメンバーで構成されていることを強調していました。しかし実際には、JMC横浜ジムの関係者やタイ在住のボクシングコーディネーターが設立を計画し、WBCムエタイの通訳を務めていた山根千抄氏を理事長に据えて設立されたという指摘があり、この点を批判する格闘技関係者も存在しました。
イングラムジム代表の鈴木秀樹氏は、タイ国プロムエタイ協会と連携し、JPMCの活動に対する遺憾の意がタイ側から表明されていることを伝えました。また、WBCムエタイを個人組織と見なし、そこから認可を得たからといって外国人がタイの国技であるムエタイの運営を仕切るのは不適切であるとの批判も展開しました。鈴木氏は以前からWBCムエタイに対して批判的な立場をとっているとされています。
JPMC理事長の山根千抄氏は、格闘技関係者としては異色の経歴を持っています。アメリカの大学でグラフィックデザインを専攻した後、大手アパレルブランドや時計ブランドの日本事業立ち上げなどに携わりました。2006年には経営学修士（MBA）を取得しています。格闘技の実践経験としては、アマチュアキックボクシングの試合に1度出場したのみです。
NPO法人としてのJPMCは、「ムエタイを通じた社会貢献」を主要な活動理念に掲げています。そのコンセプトには、「夢に向かって努力する人々や新たな挑戦をする姿勢を支援し、その夢をさらに大きく育む」といったものが含まれています。
JPMCの活動と設立経緯は、日本のキックボクシング・ムエタイ界における統括組織のあり方や、タイ本国との関係性について、様々な議論を提起するものでした。
この組織は、2008年10月1日をもって現在の名称に変更されました。それ以前は「ジャパン・プロフェッショナル・ムエタイ・コミッション」という名称でした。
歴史
設立以前
JPMCが正式に発足する前には、WBCムエタイの日本におけるランキングを定める「WBCムエタイ日本ランキング委員会」が存在しました。この委員会は、WBCムエタイ本部からの要請を受け、2007年3月29日にマスコミ関係者を中心に都内で発足したものです。スポーツライターの布施鋼治氏が議長を務め、他の6名で構成されていました。委員会は定期的に日本のムエタイ選手のランキングを作成・発表し、その活動は2007年11月1日に発表された第3回ランキングまで続けられました。
設立の経緯
JPMCの設立は、2008年2月12日にタイ・バンコクで行われた調印によって公式なものとなりました。WBCムエタイ会長のゴーヴィット・パックディーブーム氏とJPMC理事長の山根千抄氏の間で、JPMCが日本国内でWBCムエタイから正式に認可される唯一の組織であるという合意が形成されました。JPMC設立の背景には、日本のボクシング界において、世界戦を開催するためにローカル・コミッションである日本ボクシングコミッション（JBC）の存在が必要不可欠であるのと同様に、WBCムエタイの世界戦を行うためにも統括組織が必要であるという考えがありました。これは、WBCムエタイがWBCと並列の関係にあり、組織としての方針が共通していることに起因します。
しかし、設立当時、JBCとの関係性の問題などから、日本国内でWBCムエタイの世界戦（タイトルマッチ）を開催することは事実上不可能とされていました。また、JPMCが存在しない時期から、山本元気選手がロサンゼルスでWBCムエタイ世界王座に挑戦するなど、日本人選手が海外で世界戦を行ってきた経緯もあり、関係者からはJPMCの設立意義や存在価値を問う声も上がりました。
設立を巡る混乱
2008年3月3日、JPMCは「NPO法人申請中」であるとのプレスリリースを発表し、これに伴い「WBCムエタイ日本ランキング委員会」は解散しました。しかし、実際に東京都にNPO法人としての申請が行われたのは月末であり、審査期間中に「NPO法人（申請中）」と名乗ることは法令違反にあたるのではないかという指摘がなされました。
さらに、3月31日にはタイ国プロムエタイ協会のソムチャート・ジャルンワチャラウィット総裁が、JPMCの活動に対して強い遺憾の意を表明し、タイ国スポーツ局に対策を求める公式文書を提出するという事態に発展しました。総裁は、JPMCの活動を放置すれば、タイの国技であるムエタイの権威を損なう可能性があるとの懸念を示しました。
これに対しJPMCは、バンコクポスト紙にタイの観光スポーツ省大臣が「この新しい試みはタイにとって有益だ」とコメントした記事が掲載されたと発表しました。しかし、その後タイのスポーツ紙ムエサイアムが、観光スポーツ省大臣がバンコクポストの記事内容を否定したと報じました。大臣は、日本のプロモーターを名乗る女性との記念写真に応じただけであり、JPMCを一切認定した事実はないと明確に述べ、今後同様の誤解を招かないよう写真撮影にも注意が必要だと語りました。この問題は、タイの主要スポーツ紙が運営するインターネットニュースでも取り上げられ、波紋を広げました。
こうした混乱を受け、JPMCは2008年5月6日、3月に発表した設立挨拶文の内容を訂正しました。当初「日本の『全ての』プロのムエタイを統括する」とも解釈されかねない表現であったため、これを「WBCムエタイおよびJPMCに関する活動のみを統括する」という内容に修正しました。これは、タイ国プロムエタイ協会総裁の遺憾表明や公式文書提出という事態を招いた原因が、この誤解を招く表現にあったことを踏まえての対応でした。
同日、JPMC理事長の山根千抄氏は記者会見を開き、「混乱を招く文章だったことを深くお詫び申し上げる」と述べました。会見には、タイの有力プロモーターであるチューチャルーン・ラウィーアラムウェン氏（通称アンモー）も同席し、アンモー氏がWBCムエタイ会長の秘書と共にソムチャート総裁を訪問し、JPMC設立の経緯や活動内容を説明したことで「誤解は解けた」との認識を示しました。
設立の正当性を巡る議論
JPMCは設立の理念として、組織の理事が格闘技興行とは直接的な利害関係のないメンバーで構成されていることを強調していました。しかし実際には、JMC横浜ジムの関係者やタイ在住のボクシングコーディネーターが設立を計画し、WBCムエタイの通訳を務めていた山根千抄氏を理事長に据えて設立されたという指摘があり、この点を批判する格闘技関係者も存在しました。
イングラムジム代表の鈴木秀樹氏は、タイ国プロムエタイ協会と連携し、JPMCの活動に対する遺憾の意がタイ側から表明されていることを伝えました。また、WBCムエタイを個人組織と見なし、そこから認可を得たからといって外国人がタイの国技であるムエタイの運営を仕切るのは不適切であるとの批判も展開しました。鈴木氏は以前からWBCムエタイに対して批判的な立場をとっているとされています。
その他
JPMC理事長の山根千抄氏は、格闘技関係者としては異色の経歴を持っています。アメリカの大学でグラフィックデザインを専攻した後、大手アパレルブランドや時計ブランドの日本事業立ち上げなどに携わりました。2006年には経営学修士（MBA）を取得しています。格闘技の実践経験としては、アマチュアキックボクシングの試合に1度出場したのみです。
NPO法人としてのJPMCは、「ムエタイを通じた社会貢献」を主要な活動理念に掲げています。そのコンセプトには、「夢に向かって努力する人々や新たな挑戦をする姿勢を支援し、その夢をさらに大きく育む」といったものが含まれています。
JPMCの活動と設立経緯は、日本のキックボクシング・ムエタイ界における統括組織のあり方や、タイ本国との関係性について、様々な議論を提起するものでした。
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