ジャマイカ事件

ジャマイカ事件（モラント湾の暴動）

ジャマイカ事件は1865年10月11日に発生した重要な歴史的出来事であり、ジャマイカにおける黒人の権利を求める闘争の象徴とされています。この事件は、ポール・ボーグルが率いる数百人の黒人たちが、セント・トーマス教区のモラント・ベイ市街に乱入したことから始まりました。この動乱は、その後「モラント湾の暴動」として知られるようになり、ジャマイカ史における決定的な転機となりました。

事件前の背景

ジャマイカでは1834年に奴隷解放運動が起こり、その結果、奴隷制度は公式に廃止されました。しかし、解放された黒人たちは経済的には依然として厳しい状況に置かれていました。票を投じる権利があったものの、高額な投票料やその他の障壁により、実質的には政治参加が難しい状況でした。1864年の選挙では、黒人と白人の人口比は32対1でしたが、436,000人の中で投票権を持っていたのは2000人以下で、その大部分は白人でした。また、1865年には、2年間続いた干ばつによって白人農業主たちは再び奴隷制度を維持しようとしているという噂が流れ、黒人たちの不満は高まっていました。

反乱とその鎮圧

事件の直接的な引き金は、1865年10月7日に起こったある黒人男子の不法侵入による逮捕でした。これに反発する黒人たちが抗議を行ったところ、抗議者が逮捕され、怒りが高まりました。10月11日、ポール・ボーグルは抗議する群衆と共にモラント・ベイへ向かい、そこで白人自警団に遭遇しました。自警団は恐れから発砲し、数人が命を落としました。その結果、暴動が発生し、白人官吏らも襲われました。この結果、反乱軍はモラント湾の農業地帯を席巻し、多くの農場主を襲撃しました。

総督エドワード・エアはその後、政府軍を派遣し、反乱軍の鎮圧に乗り出しました。軍隊は組織的な抵抗を受けることなく、無差別に黒人を攻撃しました。その結果、439人の黒人が命を奪われ、ボーグルを含む354人が逮捕されました。また、黒人に対する厳しい懲罰が行われ、妊婦を含む600人以上が鞭打ちや長期の投獄を受けました。

英本土での影響

事件がナイロビで報道されると、英国ではエア総督の行動に対する激しい議論が巻き起こりました。エアは1866年に帰国し、彼の支持者たちは彼の名誉を守るための晩餐会を開催しましたが、反対者たちは彼を虐殺者として非難しました。このような背景から、ジャマイカ委員会が設立され、エアは反乱の鎮圧に関する説明を求められました。当時の自由主義者たちが参加したこの委員会は、反乱への過剰な武力の使用を証明しようとしました。

モラント湾の反乱が単なる局地的な暴動ではなく、ジャマイカの政策に重大な変化をもたらしたとの見解も存在しています。結果として、ジャマイカ議会の特権が取り消され、ジャマイカは直轄植民地として扱われるようになりました。これにより、ジャマイカの政治的状況は大きな転換を迎え、以後の歴史に多大な影響を及ぼすことになります。

参考文献

• - 山下重一「J.S.ミルとジャマイカ事件」（御茶の水書房、1998年）

この事件は、黒人の権利をめぐる歴史的な教訓を与える重要な出来事として、今日も多くの研究者に注目されています。

もう一度検索