ジャン＝クロード・デュヴァリエ

ジャン＝クロード・デュヴァリエ：ハイチの「ベビー・ドク」とその時代

ジャン＝クロード・デュヴァリエ（1951年7月3日 - 2014年10月4日）は、ハイチ共和国大統領として15年間君臨した人物です。愛称は「ベベ・ドク」または「ベビー・ドク」と呼ばれ、独裁者フランソワ・デュヴァリエ（パパ・ドク）の息子として知られています。1971年、わずか19歳で大統領に就任し、世界最年少の大統領となりました。

彼の統治は、アメリカとの経済協力強化という側面と、国民生活の悪化という暗い側面の両方を持ち合わせていました。1977年から導入された「ジャン＝クロード主義」と名付けられた経済開放政策は、アメリカからの援助と資本導入、そして混血のテクノクラートの重用による工業化・近代化を目指しました。しかし、この政策は農業や牧畜の衰退を招き、結果として恐怖政治と飢饉により、多くのハイチ国民がボートピープルとしてアメリカへ逃れる事態を招きました。国民生活は貧困化の一途を辿り、国民の不満は高まっていきました。

私生活では、1980年に財閥令嬢ミシェル・ベネットと結婚し、贅沢な生活を送りました。ジャズ愛好家として知られ、高級車やオートバイのコレクションを誇り、それらをフルスピードで運転することが趣味だったと伝えられています。一方、妻はパリへ買い物旅行に出かけるなど、極貧の国民との生活水準の差は際立っていました。更に、姑との不仲も噂され、贅沢を巡る張り合いが伝えられています。こうした大統領一族の腐敗ぶりは、閣僚たちの不正蓄財にも波及しました。

1978年頃からは反政府暴動が頻発し、武装蜂起や暴動が相次ぎました。政府はこれらを徹底的に弾圧し、国際的な問題にも発展しました。1985年には全国規模の反乱が発生し、国内の有力者たちの支持を失ったデュヴァリエは、アメリカとフランスからの圧力を受け、1986年に米軍機でフランスへ亡命しました。

亡命先のフランスでは、財産を差し押さえられ、妻とも離婚しました。一時的な困窮を経験した後、別の女性と再婚（ドメスティックパートナー）し、生活を立て直したとされます。亡命後は肥満に悩まされた時期もあったようですが、再婚した女性のおかげでスリムな体型を取り戻したと伝えられています。しかし、大統領時代の行為については、最後まで反省の色を見せませんでした。

亡命から25年後の2011年1月、3日間ハイチへ帰国しましたが、大統領時代の弾圧と人権侵害に関して訴追される可能性が指摘されました。帰国直後、人権侵害の罪で訴追されましたが、時効が認められました。しかし、2014年2月には控訴裁判所が人権侵害罪に時効はないとの判断を下しました。ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルは、多数の被害者証言を検察に提出していました。

2014年、ポルトープランス市内で心臓発作により63歳で死去しました。彼の統治は、ハイチの歴史に暗い影を落としたまま、幕を閉じました。彼の在任期間中、ハイチは経済的、政治的に大きな苦境に陥り、国民は長年にわたる貧困と弾圧に苦しめられました。彼の死後も、その政治的遺産は、ハイチ社会に多大な影響を与え続けています。

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