ジュラシック・パーク/リデンプション

『ジュラシック・パーク: リデンプション』

本作『ジュラシック・パーク: リデンプション』は、人気映画シリーズ『ジュラシック・パーク』の世界観を基にしたコミック作品です。全5冊から構成され、2010年にIDWパブリッシングより出版されました。ボブ・シュレックが物語を手がけ、映画第1作から成長したティム・マーフィーとアレクシス（レックス）・マーフィーを主人公に、新たな恐竜騒動が描かれます。

物語の舞台と始まり

物語は、かつてジュラシック・パークで恐ろしい体験をしたジョン・ハモンドの孫たち、ティムとレックスが大人になった時代を舞台に展開します。裕福な生活を送るティムは、亡き祖父ジョン・ハモンドの「夢」を受け継ぎ、テキサス州のダイナサウルス・バレー州立公園内に秘密裏に地下研究所を建設します。ここで新たな恐竜を造り出し、近隣のグレンローズ市に安全なジュラシック・パークを再建するという壮大な計画を進めていました。彼は、古生物学者のバッカー博士や、かつてインジェン社で働いていた遺伝子学者ヘンリー・ウー博士らを雇い、プロジェクトを推し進めます。

ティムは、過去の惨劇の教訓から、人間に危害を加える肉食恐竜は造らず、穏やかな草食恐竜のみのパークを目指していました。彼は、テキサス州下院議員など協力者を募り、さらにオンラインで知り合ったL・ウォールドと名乗る投資家をビジネスパートナーとします。

一方、姉のレックス・マーフィーは、自身が設立した世界最大の有機栽培野菜会社「Lexxcrops」の社長として多忙な日々を送っており、「メガ有名人」と呼ばれる存在になっていました。彼女はジュラシック・パーク事件の当事者として、イスラ・ヌブラル島などの恐竜生息地の保護と立ち入り禁止を国際連合で訴えるなど、積極的に活動していました。ティムのパーク計画に対しては、地元住民の反対運動を説得し沈静化させるなど、弟を支えます。

忍び寄る陰謀

しかし、ティムの計画は予期せぬ形で暗礁に乗り上げます。彼がビジネスパートナーとしたL・ウォールドの正体は、映画『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』でサンディエゴ事件の際にティラノサウルスに襲われ死亡したと思われていたピーター・ルドローでした。ルドローは奇跡的に生還していたものの、体中に重傷を負い、顔も変わり果て車椅子生活を余儀なくされていました。彼は、ハモンド家とティムへの激しい復讐心を燃やしており、L・ウォールドという偽名（L. Wouldのアナグラム）でティムに近づき、彼のパーク計画を内側から破壊しようと目論みます。

ルドローは、かつてインジェン社のライバル企業バイオシン社で働いていた遺伝子学者ルイス・ドジスンを雇い、ティムの地下研究所に潜入させます。ドジスンはルドローの指示を受け、ティムが造るつもりのなかった肉食恐竜を秘密裏に生成し、さらには恐竜たちを研究所から解放するという破壊工作を実行します。この妨害により、ヘンリー・ウー博士はドジソンによって解き放たれたグラシリスクスに襲われ、命を落としたかに見えました（ただし、後の映画『ジュラシック・ワールド』で生存が明らかになります）。

再びのパニックと集結

解き放たれた恐竜たちは、グレンローズの町に逃げ出し、町はたちまちパニック状態に陥ります。ティムとレックスは事態の収拾に奔走する中で、思わぬ再会を果たします。かつてイスラ・ヌブラル島で共に死線をくぐり抜けた古生物学者のアラン・グラント博士と古植物学者のエリー・サトラー博士が、恐竜騒ぎを知って救援に駆けつけてきたのです。13年ぶりに再会したティムとレックスは、グラント博士、サトラー博士と共に、再び恐竜の脅威に立ち向かうことになります。地元の保安官ゼイビア・デルガドも、町のカウボーイたちを率いて恐竜捕獲チームを結成し、治安維持に努め、ティムたちを支えます。

物語はクライマックスへ向かい、ティムはルドローによって捕らえられ、命の危機に瀕します。ルドローはティムを殺害し、恐竜騒ぎによってハモンド家を歴史的な悪者として記憶させようとしますが、バッカー博士の機転により、ルドロー自身が解き放ったグラシリスクスに襲われ、最期を迎えます。また、破壊工作を行ったドジスンも、トリケラトプスに突かれて命を落とします。

最終的に、ティム、レックス、グラント、エリー、バッカー博士、デルガド保安官らが協力し、町に現れた恐竜たちの対処にあたります。

登場する恐竜たち

本作には、カルノタウルス、ディメトロドン、グラシリスクス、ムスサウルス、オヴィラプトル、プロトケラトプス、プテラノドン、トリケラトプス、ヴェロキラプトルといった多様な恐竜が登場し、物語にスリルを加えます。モササウルス、ティラノサウルス・レックス、スピノサウルスなども、カバーイラストや言及という形で登場します。

『ジュラシック・パーク: リデンプション』は、映画シリーズの正統な続編として、主要キャラクターたちの成長や「その後」を描きつつ、恐竜の創造と人間のエゴが招く危険というシリーズの根幹にあるテーマを、新たな舞台で掘り下げた作品と言えるでしょう。

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