ジュリー・ジルー

ジュリー・ジルー（Julie Ann Giroux）は、1961年12月12日にマサチューセッツ州フェアヘーヴンで生まれたアメリカ合衆国の作曲家です。彼女はオーケストラ、合唱、室内楽、そして特に吹奏楽といった多岐にわたるジャンルで精力的に作曲活動を行っています。

ルイジアナ州モンローのワシタ高校を卒業後、同州バトンルージュにあるルイジアナ州立大学に進学し、音楽の学士号を取得しました。大学在学中には既にその才能が認められ、作曲した吹奏楽曲がSouthern Music Companyから出版されています。大学卒業後、彼女はすぐにカリフォルニア州ロサンゼルスへと拠点を移し、著名な映画音楽作曲家であるビル・コンティに師事しました。ここで、彼女はTVドラマシリーズ「南北戦争物語 愛と自由への大地」の音楽制作に携わるなど、映像音楽の世界でのキャリアをスタートさせます。ロサンゼルスでは、他にもJack EskewやGreg McRitchieといった音楽家からも指導を受けました。

1985年から1997年にかけての期間は、ジルーのキャリアにおいて映画やテレビのサウンドトラック制作が中心となりました。この間に彼女が音楽を担当した作品には、「April Fool's Day」、「ダイナスティ」、「The Karate Kid Part II」、「ブロードキャスト・ニュース」、「Masters of the Universe」、「白人は跳べない」、「ブレイズ」など、多岐にわたるジャンルの人気作品が含まれています。これらの経験は、後のコンサート作品における表現力の幅広さに影響を与えたと考えられます。

1997年以降、ジュリー・ジルーは次第にコンサート音楽、特に吹奏楽やオーケストラのための作品作曲に重点を移していきました。この時期、彼女はMusica Propriaなどと協力し、数多くの質の高い作品を発表しています。教育者・理論家としても、2004年には書籍「Composers on Composing for Band, Volume Two」に寄稿しています。ジルーは自身の作品演奏にも積極的で、2009年には自作「吹奏楽と独奏ピアノのためのコルドバ」をピアニストとしてアメリカ国内の5都市で演奏しました。国際的には、世界銀行が出資したドキュメンタリー映画「Call for Green China」の音楽を手がけ、中国で演奏されました。近年の重要な演奏機会として、2018年には「交響曲第5番 Elements」が東方吹奏楽団により演奏され、Midwest Clinicではトランペット協奏曲がクリストファー・マーチン、武蔵野音楽大学、レイ・クレイマー指揮で披露されました。

現在、ジュリー・ジルーはミシシッピ州マディソンに在住し、創作活動を続けています。

彼女の作品は多岐にわたりますが、特に吹奏楽分野での貢献は顕著です。代表的な作品群の一つに、第5番まで作曲されている吹奏楽のための交響曲シリーズがあります。これらは「カロデン」、「呼び出しより優れたものはない」、「寓話交響曲」、「日本のしおり」、「エレメンツ」と題され、壮大なスケールと多様な楽想で知られます。その他にも、独奏楽器と吹奏楽のための作品（「Arcus IX」、「Cordoba」など）や、多数の個性豊かな吹奏楽曲、オーケストラ作品、そして人気作品の吹奏楽編曲を手がけています。

ジュリー・ジルーの作品は多くの録音を通じて世界に紹介されています。Mark MastersやKlavierといった主要なレーベルから複数のアルバムがリリースされており、特にテキサス大学エルパソ校やノーステキサス大学といったアメリカの大学バンドによる演奏が多くを占めています。これらのCDは、彼女の革新的なサウンドや多彩な表現を聴衆に届ける重要な役割を果たしています。

ジュリー・ジルーは、ハリウッドでの経験を生かしつつ、吹奏楽を中心としたコンサート音楽の世界で独自の地位を築いた現代アメリカの重要な作曲家です。その作品は、技術的な完成度と聴衆を惹きつける魅力にあふれています。

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