ジョアン・セーザル・モンテイロ

ジョアン・セーザル・モンテイロ：ポルトガルの映画詩人

ジョアン・セーザル・モンテイロ・サントス (1939年2月2日 - 2003年2月3日) は、ポルトガルを代表する映画監督、俳優、そして映画批評家です。パウロ・ローシャと共に「ノヴォ・シネマ」の中核を担い、その独創的な映像表現と反骨精神で世界中の映画ファンを魅了しました。

生い立ちと初期のキャリア

コインブラ県フィゲイラダフォスの中産階級家庭に生まれたモンテイロは、反聖職者、反ファシスト的な環境で育ちました。15歳でリスボンに移住し、その後、カルースト・グルベンキアン財団の支援を受けてロンドン・フィルム・スクールに留学。帰国後は資金難に苦労しながらも、映画制作に情熱を注ぎ込みました。1969年にはポルトガルの詩人を題材にしたドキュメンタリー短篇『ソフィア・デ・メロ・ブレイナー・アンデルセン』を発表。並行して、『Imagem』、『Diário de Lisboa』、『O Século』などの定期刊行物に映画批評を執筆し、批評家としての顔も持ち合わせていました。

映画監督としての軌跡

1970年、長編デビュー作となる短編映画『Quem Espera por Sapatos de Defunto Morre Descalço』を完成させました。その後も精力的に作品を発表し、1972年の長編デビュー作『映画的施しの断片 Fragmentos de um Filme Esmola: A Sagrada Família』をはじめ、ポルトガルの民話を題材にした『シルヴェストレ』(1981年、ヴェネツィア国際映画祭出品)、ラウラ・モランテ主演の『海の花 À Flor do Mar』(1986年、サルソマッジョーレ映画祭審査員特別賞受賞)など、数々の傑作を生み出しました。

モンテイロの作品には、大詩人ジョアン・ド・デウシュをモデルにしたキャラクターが登場する『黄色い家の記憶 Recordações da Casa Amarela』(1989年、ヴェネツィア国際映画祭出品)や、フェビエンヌ・バーブ主演の『ラスト・ダイビング O Último Mergulho』(1992年)なども含まれます。晩年まで精力的に作品を発表し続け、ヴェネツィア国際映画祭やカンヌ国際映画祭など、世界的な映画祭で高い評価を受けました。代表作として『ジェラートの天国 A Comédia de Deus』(1995年、ヴェネツィア国際映画祭出品)、『神の結婚 As Bodas de Deus』(1999年、カンヌ国際映画祭出品)、『白雪姫 Branca de Neve』(2000年、ヴェネツィア国際映画祭出品)などがあります。『白雪姫』は、映画の制作過程そのものをテーマにした実験的な作品として知られています。彼の遺作となったのは、2003年のカンヌ国際映画祭に出品された『行ったり来たり Vai e Vem』です。

詩的で反骨的な作風

モンテイロの作品は、風刺や皮肉を交えながらも、詩的な映像美と抒情性を備えています。しばしば自らの体験を反映させた自叙伝的な要素を含み、論争を呼ぶことも少なくありませんでした。多くの作品で自ら主演を務め、その個性的な演技も高く評価されています。

彼の映画は、ポルトガル国内外の批評家や研究者から高い評価を受け、マノエル・ド・オリヴェイラと並び、ポルトガルを代表する映画監督の一人として広く認識されています。

没後

2003年2月3日、リスボンで癌のため64歳で亡くなりました。没後も、彼の作品はポルトガル映画祭やシネフィル・イマジカなどを通して日本でも紹介されており、フランスではDVDボックスが発売されるなど、世界中で高い人気を誇っています。

モンテイロの残した作品群は、その独特の美学と反骨精神、そして詩的な表現によって、これからも世界中の映画愛好家を魅了し続けることでしょう。

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