ジョイント・ストック・カンパニー

ジョイント・ストック・カンパニー (Joint Stock Company) の解説

ジョイント・ストック・カンパニー (JSC) は、イギリスやアメリカにおける歴史的な企業形態です。現代の株式会社の原型ともいえる存在ですが、両者は明確に区別されます。本稿では、JSCの歴史、法制度上の位置づけ、株式会社との違いについて詳細に解説します。

JSCの概要：株式会社との類似点と相違点

JSCは、出資持分が譲渡可能な株式によって表され、株主によって所有される企業形態です。1553年設立のイギリスのロシア会社がその起源とされています。しかし、株式会社と完全に同一ではありません。

JSCと株式会社の類似点は、出資が株式という形で分割され、株主が所有する点、構成員の変更に影響されない恒久的な組織である点、所有と経営が分離している点などです。

一方、大きな違いは、特にアメリカにおいて顕著です。イギリスでは、一定の要件を満たすJSCは会社法に基づく株式会社と同一視されますが、アメリカでは、株式会社とは異なる独自の企業形態として扱われます。その違いは、株主の責任、法人格の有無、政府による規制の程度などに表れます。

イギリスにおけるJSCの歴史と法的位置づけ

初期のJSCでは、株主は無限責任を負っていました。これは、会社が破綻した場合、株主が私財を投じて会社の債務を負担することを意味します。その後、1825年の英国会社法で有限責任が認められるようになり、1844年のジョイント・ストック・カンパニー法、1855年の有限責任法、1862年の会社法などを経て、現代の株式会社に近い形へと進化しました。

現在のイギリス会社法では、JSCは登記可能な会社形態として規定されています。登記されたJSCは、株式会社と同一視されますが、登記されないJSCは、法人格を持たず、株主の無限責任が残る古い形態の会社となります。

アダム・スミスは『国富論』でJSCを批判していますが、これは現代の株式会社ではなく、当時のJSCを念頭に置いていたと考えられています。スミスの批判は、所有と経営の分離による無責任な行動への懸念に基づいています。

アメリカにおけるJSCの歴史と法的位置づけ

アメリカでも、イギリス植民地時代からJSCが存在していました。独立後も一般的な企業形態でしたが、19世紀前半に各州で会社法が制定されると、法人格と株主の有限責任を有する株式会社が台頭し、JSCは衰退していきました。

アメリカでは、JSCは株式会社とは明確に区別されています。一般的に、株主は無限責任を負い、法人格も有しません。州の成文法に基づいて設立された場合のみ、例外的に法人格や有限責任が認められることがあります。

株式会社との比較：類似点と相違点のまとめ

日本語訳とその他の国のJSC

JSCの日本語訳は、「株式会社」が用いられることもありますが、両者は異なる概念であるため、「株式社団」、「合本会社」など、より正確な訳語が用いられることも増えています。また、ロシアやベトナムなど、他の国でも「Joint Stock Company」という名称が用いられる企業形態がありますが、それらはイギリスやアメリカのJSCとは異なる制度上の位置づけにあります。

結論

JSCは、現代の株式会社の起源をたどる重要な企業形態ですが、その歴史的背景、法制度上の位置づけ、そして株式会社との違いを理解することが重要です。本稿がその理解の一助となれば幸いです。

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