ジョゼフ・アンドリュース

『ジョセフ・アンドリューズ』は、18世紀イギリスを代表する小説家ヘンリー・フィールディングによる傑作小説です。1742年に発表され、同時代のサミュエル・リチャードソン作『パメラ』のパロディとして、また冒険小説として高い評価を得ています。

本作の主人公は、パメラの弟であるジョセフ・アンドリューズ。彼は姉と同様に、奉公先の女主人であるブービー夫人から求愛を受けます。しかし、ジョセフはそれを断固拒否。貞節なジョセフの美貌と高潔な品格は、ブービー夫人だけでなく、小間使いのスリップスロップをも惹きつけますが、彼の揺るぎない信念は、彼をブービー家の屋敷から追放するという結果を招きます。

追放されたジョセフは、貧しいながらも博識で力強いエイブラハム・アダムズ牧師と出会います。アダムズ牧師は、ジョセフの旅の道連れとなり、時にユーモラスに、時に真剣に彼を導きます。二人の旅には、ジョセフが深く愛するファニーも加わります。ファニーは、ジョセフが追放されたことを知り、彼を探して危険な旅に出た、心優しく美しい女性です。

旅の過程で、ジョセフとアダムズ牧師、ファニーは様々な困難に直面します。金銭的な困窮、人間模様の複雑さ、社会の不条理など、彼らの旅は決して平坦ではありません。しかし、その困難を乗り越える中で、彼らは友情を深め、人間としての成長を遂げていきます。アダムズ牧師の温かいユーモアと深い信仰、ジョセフの誠実さ、ファニーのひたむきさは、読者に深い感動を与えます。

物語の中心は、ジョセフとファニーの純粋な愛です。二人は幼馴染であり、お互いを深く愛し合っています。ブービー夫人やスリップスロップの妨害、様々な困難にも関わらず、彼らの愛は揺らぐことはありません。

物語の後半では、ジョセフの姉であるパメラが登場します。彼女は、弟の危機を聞きつけ、夫であるブービー氏と共に屋敷へと駆けつけます。そして、ジョセフとファニーの秘密を知り、二人の結婚を許すのです。

『ジョセフ・アンドリューズ』は、単なる冒険小説ではありません。貧富の差、社会の矛盾、人間の様々な感情など、当時の社会問題を巧みに織り交ぜながら、人間の本質を問いかける作品です。ユーモアと風刺、そして深い人間ドラマが融合した、読後感の深い傑作と言えるでしょう。

登場人物たちは、それぞれが強烈な個性を持っています。傲慢で自己中心的で、ジョセフに執着するブービー夫人。上流社会に憧れ、言葉遣いを間違えがちな小間使いのスリップスロップ。金銭に困窮しながらも、温かい心を持つ宿屋の主人ウィルソン。そして、ギリシャ語の原文を携えるほどの博識さと、世俗離れした行動で読者を笑わせるアダムズ牧師。彼ら個性豊かな登場人物たちが織りなす人間模様は、物語にさらに深みを与えています。

『ジョセフ・アンドリューズ』は、ヘンリー・フィールディングの代表作の一つとして、現在でも多くの読者に愛され続けている、まさに不朽の名作です。

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