ジョルダーノ (アパレル)

ジョルダーノ

ジョルダーノ（Giordano）は、香港で誕生した国際的なアパレルブランドです。手頃な価格で提供されるカジュアルファッションを主力とし、いわゆるファストファッションの範疇に入ります。アジアを中心にグローバルに展開しており、香港、中国大陸、台湾、マレーシア、シンガポール、タイ、韓国、インドなど、世界各地に2600を超える店舗を構えています。

ブランドの歴史

ジョルダーノの起源は1970年代に遡ります。香港の実業家、黎智英（ジミー・ライ）氏が中国本土に衣料品工場を設立したことに始まります。ブランドとして「ジョルダーノ」が香港で初めて立ち上げられたのは1981年のことです。当初は、より洗練された高級感のあるプレミアムブランドとして位置づけられていました。

ブランドは順調に成長し、1980年代には海外への展開を開始します。1983年には台湾に、1985年にはシンガポールにそれぞれ最初の店舗をオープンさせました。

重要な転換期が訪れたのは1986年です。この年、ジョルダーノは事業戦略を大きく転換し、より多くの消費者に手が届きやすい、手頃な価格帯のリーズナブルブランドへと舵を切りました。この戦略変更が功を奏し、大衆的な支持を得るブランドへと成長していきます。

政治的影響と試練

ジョルダーノの歴史において特筆すべきは、創業者である黎智英氏の政治的な活動が経営に与えた影響です。1989年に発生した天安門事件の後、黎氏は中国政府を公然と批判する姿勢を取り、公開書簡を通じて意見表明を行ったり、反体制的なメッセージを込めたTシャツを大量に販売したりしました。この行動は、中国本土でのジョルダーノの事業運営に直接的な影響を及ぼし、現地の店舗の経営認可が次々と取り消されるなど、深刻な打撃を受けることになりました。

上場と国際展開、そして創業者の離脱

このような困難を乗り越えつつ、ジョルダーノは1991年に香港証券取引所への上場を果たし、企業としての基盤を強化しました。1992年には中国大陸への本格的な進出を再開するとともに、日本市場にも初めて参入します。しかし、この日本での最初の挑戦は、残念ながら比較的早期に撤退という結果に終わりました。

創業者である黎智英氏は、政治的な活動と並行して事業を続けていましたが、1994年にはジョルダーノの会長職を辞任し、1996年には保有していたジョルダーノの株式すべてを売却し、経営から完全に手を引きました。

日本市場への再挑戦

日本市場への挑戦は一度で終わりませんでした。2001年にジョルダーノは日本市場への再進出を果たしますが、事業の伸び悩みを理由に、再び撤退を余儀なくされます。しかし、ジョルダーノは日本市場の可能性を諦めず、2011年には国内でアパレル事業を展開する株式会社ウィゴーとフランチャイズ契約を締結する形で、三度目の日本進出を果たし、現在に至ります。このように、日本での展開は容易ではなかったものの、粘り強く市場への定着を目指す姿勢が見られます。

その他、2006年にはインド市場への進出を果たすなど、アジアを中心としたグローバルな店舗ネットワークをさらに拡大しています。

ジョルダーノは、創業初期の高級路線から転換した手頃な価格帯のカジュアルウェアによって、多くの国と地域で支持を得てきました。その歴史は、ビジネス戦略の変更、創業者の政治的活動による試練、そして特定の市場（日本など）への粘り強い再挑戦といった、多様な側面を含んでいます。

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