ジョン・ガリアーノ

ジョン・ガリアーノ（John Galliano）は、1960年11月28日生まれのイギリス人ファッションデザイナーです。本名はフアン・カルロス・アントニオ・ガリアーノ＝ギレン（Juan Carlos Antonio Galliano-Guillén）。ジブラルタルで生まれ、幼少期にロンドンへ移住しました。彼のデザインは、演劇的な要素と歴史的なインスピレーションが特徴で、ファッション界に大きな影響を与えてきました。

若き才能の開花

セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでファッションを学び、1984年に首席で卒業。卒業制作コレクションは、ロンドンの有名ブティック「ブラウンズ」のウィンドウを飾り、高い評価を得ました。その後、ブラウンズとの契約を機に、自身のブランドを立ち上げ、ロンドン・コレクションでデビューを果たします。初期は、バイアスカットのドレスやオーダーメイドスーツで注目を集めました。

パリでの活躍

1989年、パリ・オートクチュール協会に招待され、コレクションを発表。1991年には、パリ・コレクションの正式メンバーとなり、国際的な舞台で活躍するようになります。1995年には、ユベール・ド・ジバンシィの後任として、ジバンシィのデザイナーに抜擢されました。しかし、彼が手がけたジバンシィのコレクションはわずか2回で、その後アレキサンダー・マックイーンが後任を務めます。同年、3度目の「ブリティッシュ・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

1996年、ジャンフランコ・フェレの後を受け、クリスチャン・ディオールのデザイナーに就任。ディオールの伝統に、ガリアーノ独自の創造性と斬新なアイデアを持ち込み、ブランドに新たな息吹を吹き込みました。1997年には、オートクチュール・コレクションでデビューし、織部賞を受賞しています。2007年には、セカンドライン「Galliano」を発表しました。

失墜と復活

2011年2月、パリのカフェで人種差別的な発言をしたとして告発され、警察に一時拘束されます。この事件を受け、ディオールから停職処分を受け、その後解雇。自身のブランド「John Galliano」のデザイナーも解任されるという事態に発展しました。長年の功績が一瞬にして失われることになりました。

しかし、2014年、ファッションブランド「メゾン マルジェラ」のクリエイティブ・ディレクターに就任し、業界に復帰。再び第一線で活躍を始めます。2017年には、パリの本店を改装し、新たな店舗もオープンするなど、販売網の拡大にも成功しました。

人種差別事件

2011年の人種差別発言は、ガリアーノのキャリアに大きな影を落としました。彼は、パリのカフェでユダヤ人女性に対し、「俺はヒットラーが大好きだ」などの暴言を吐いたとされています。この事件は、メディアで大きく報道され、世間からの非難を浴びました。パリ軽罪裁判所は、ガリアーノに対し、人種差別的侮辱罪で執行猶予付きの罰金刑を言い渡しました。また、レジオンドヌール勲章も剥奪されています。

映画

2024年には、彼の波乱万丈な人生を描いたドキュメンタリー映画「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」が公開されました。ケヴィン・マクドナルドが監督を務め、ガリアーノの栄光と挫折、そして再生を描いています。

ジョン・ガリアーノは、その才能と創造性でファッション界に大きな影響を与えましたが、同時に、人種差別発言という過ちを犯しました。彼のキャリアは、ファッション業界における成功と倫理的な問題について、私たちに深く考えさせるきっかけを与えてくれます。



外部リンク:

John Galliano 公式ウェブサイト

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