ジョン・メトカーフ

ウィリアム・ジョン・メトカーフ（William John Metcalfe）は、1891年10月6日にイングランドのノーフォーク州で生まれ、1965年7月31日にその生涯を終えた人物です。彼は小説家であると同時に、英語教師としても活動していました。

特に、彼の創作活動はホラー小説の分野で広く知られています。メトカーフの作品は、一般的なホラーの枠に収まらない独特の個性を持っていました。

同時代の小説家であるT.E.D.クラインは、メトカーフの作品について詳細な評価を残しています。クラインによれば、メトカーフは「その多くが時代の潮流と馴染まない孤独な不適合者を題材とし、緻密な筆致で超自然的な物語を紡ぎ出した作家」であるとされています。この評価は、彼の作品が描く内向的あるいは社会から逸脱した主人公と、そこに絡む超常的な要素の、他の作家には見られない組み合わせを指摘しています。

また、評論家のブライアン・ステイブルフォードは、メトカーフの作品が読後に「独特の不安感を構築する」力を持っている点を強調しています。これは、彼の描くホラーが単なる表面的な恐怖に留まらず、心理的な深みや、読者の心に長く残る不穏な空気感を生み出すことに長けていたことを示唆しています。

これらの批評家の評価から、メトカーフは当時の文学シーンにおいて主流とは異なる道を歩みつつも、その独自の視点と技巧によって、一部の識者から高く評価されていた作家であったと言えます。

メトカーフは複数の長編小説を発表しています。主な長編としては以下の作品が知られています。

『Brenner's Boy』（1932年）
『Arm's Length』
『Spring Darkness』（アメリカ合衆国での題名は『Mrs Condover』）
『Foster-Girl』（アメリカ合衆国での題名は『Sally』）
『All Friends Are Strangers』

これらの作品の中でも、特に『The Feasting Dead』は彼の代表作として挙げられることが多い作品です。この作品は1954年に発表されましたが、そのユニークな内容から近年再び注目を集めており、2014年にはヴァランコート・ブックス（Valancourt Books）から再版されました。さらに、日本語訳も存在し、2019年には国書刊行会から横山茂雄氏と北川依子氏の翻訳により『死者の饗宴』として刊行されています。この邦訳の刊行は、メトカーフ作品が現代の日本においても読者を獲得し、再評価が進んでいることを示しています。

長編小説に加え、短編小説も多数執筆し、いくつかの短編集にまとめられています。主要な短編集は以下の通りです。

『The Smoking Leg, and Other Stories』（1925年）
『Judas, and Other Stories』（1931年）
『Nightmare Jack and Other Tales』（1998年）

これらの短編作品においても、彼の得意とする超自然的要素と心理的な描写が光っており、短編という形式の中でその独特の作風が凝縮されています。

ウィリアム・ジョン・メトカーフは、生前にはおそらく広く知られる存在ではなかったかもしれませんが、その死後、特に近年になってからの再評価により、その独特のホラー作品は新たな読者に発見されています。孤独な魂と超常的な出来事が織りなす彼の物語は、発表から長い年月を経てもなお、読者に深い印象と独特の不安感を残し続けています。彼は、ホラー文学史において、単なるジャンル作家という枠を超えた、個性豊かな作家として記憶されるべき人物です。

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