ジョン・リリー

ジョン・リリー（1554年-1606年）は、エリザベス朝イングランドの文壇を代表する作家にして劇作家です。オックスフォード大学出身というエリートな経歴を持ち、その才能は同時代の作家たちの中でも際立っていました。

彼の名を不朽のものとしたのは、なんといっても散文小説『ユーフュイーズ』（Euphues）です。1578年に出版されたこの作品は、洗練された比喩や典故、そして巧みな頭韻を駆使した、極めて装飾的な文体で書かれていました。この文体は「ユーフュイズム」と呼ばれ、当時の人々を魅了し、典雅さの頂点と賞賛されました。今日でも「ユーフュイズム」は、美しく洗練された文章様式を指す言葉として用いられています。

リリーは生涯で7つの喜劇作品を発表しました。これらの作品は、主に会話の巧みさにおいて、後のシェイクスピアの初期作品に影響を与えたとされています。特に『ガラシーア』は、シェイクスピアの代表作『夏の夜の夢』と内容や展開において類似点が指摘されており、両作品間の関連性が研究者によって盛んに議論されています。

リリーは上流社会の生活をこよなく愛し、彼の作品は全て、上流階級の人々の嗜好に合わせたものでした。実際、彼の作品は貴族社会で広く受け入れられ、高い評価を得ました。宮廷での出世を熱望し、様々な方面に働きかけもしましたが、その願いは生涯叶うことはありませんでした。それでも彼は、文筆活動を通じて、エリザベス朝イングランドの文化に多大な貢献を果たしたのです。

彼の主要な作品としては以下のものがあります。

『ユーフュイーズ』（散文小説、正編1578年、続編1580年）：彼の名を不滅のものとした代表作。
『カンパスピ』（1584年）：洗練されたユーフュイズム様式で書かれた喜劇作品。
『サフォーとフェイオー』（1584年）：古代ギリシャの詩人を題材とした作品。
『月の男エンディミオン』（1591年）：神話の世界を舞台としたファンタジー要素のある作品。
『マイダス王』（1592年）：ギリシャ神話を題材とした喜劇作品。
『ガラシーア』（1592年）：シェイクスピアの『夏の夜の夢』との類似性が指摘されている作品。
『占いおばさんボンビー』（1594年）：庶民の生活を垣間見せる作品。
『月の女』（1597年）：神秘的な雰囲気を持つ作品。
* 『愛の変身』（1601年）：愛をテーマにした作品。

ジョン・リリーは、華麗な言葉と洗練された文体で、エリザベス朝イングランドの文壇に輝かしい足跡を残した作家でした。彼の作品は、現代においてもその美しさ、そして当時の社会状況を反映した内容から、高い評価を受けています。宮廷への憧憬と、現実の挫折の間で揺れ動いた彼の生涯は、現代の私たちに、様々な示唆を与えてくれるでしょう。

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