ジラール・デザルグ

ジラール・デザルグ

ジラール・デザルグ（Girard Desargues, 1591年2月21日 - 1661年10月）は、17世紀フランスの数学者、建築家です。リヨン出身の彼は、幾何学、特に射影幾何学の基礎を築いた人物として知られています。

射影幾何学の創始

デザルグの数学における最も重要な功績は、射影幾何学の基本概念を確立したことです。彼は、ユークリッド幾何学では存在しない「無限遠点」という革新的な概念を導入しました。これは、平行線が無限遠で交わるという考え方で、図形の投影変換のもとでの性質を体系的に探求する射影幾何学の出発点となりました。

また、彼は自身の名を冠した「デザルグの定理」を証明しました。この定理は、特定の配置にある二つの三角形について、対応する頂点を結ぶ直線が一点で交わることと、対応する辺の延長線が同一直線上にあることが同値であるという、射影幾何学における基本的な結果です。

同時代の不理解

デザルグの独創的な研究は、当時の数学界ではほとんど理解されませんでした。彼は自身の革新的な概念を説明するために、既存の数学とは異なる新しい用語を多く創り出しました。これらの新しい概念と専門用語は、当時の学者たちにとって馴染みがなく、彼の研究内容を難解に感じさせた一因となりました。射影幾何学という、ユークリッド幾何学とは異なる視点を持つ体系自体も、広く受け入れられるには時間を要しました。

後世への影響と再評価

幸いにも、同時代のブレーズ・パスカルやルネ・デカルトといった学者たちは、デザルグの研究の価値をある程度理解し、彼を評価しました。パスカルはデザルグの円錐曲線に関する研究から影響を受けています。デカルトは解析幾何学の提唱者です。しかし、これらの理解者にもかかわらず、デザルグの業績は彼の死後、約150年にわたり忘れ去られた状態となりました。

彼の功績が再び注目を浴びたのは、19世紀初頭になってからです。フランスの数学者ガスパール・モンジュとその弟子ジャン＝ヴィクトル・ポンスレらが、彼の著作を再発見し、その重要性を認識しました。彼らによる再評価と研究によって、デザルグの射影幾何学は近代数学の一分野として発展することになります。

名前の表記について

デザルグの名前は、文献によって「ジラール（Girard）」と「ジェラール（Gérard）」の二通りの表記が見られます。特に複数の編集者が関わる出版物では、同じ書籍の中で両方の表記が混在している場合もあり、彼の業績を調べる際にはこの点に注意が必要です。

関連項目

射影幾何学
デザルグの定理
* デサルグ (クレーター): デザルグにちなみ命名された月のクレーターです。

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