ジーク川

ジーク川 (Sieg): ドイツを潤す清流

ジーク川は、ドイツのノルトライン＝ヴェストファーレン州（NW）とラインラント＝プファルツ州（RP）を流れ、ライン川へと注ぐ全長152.7kmの河川です。その源流は、ロタール山地の北東部、ネトフェンの町境付近に位置し、標高603mの地点から湧き出しています。

多様な景観を織りなす流れ

川は東西に流れ、主要都市ジーゲンを通過します。都市部では、ヒュッテンタールシュトラーセが川の上を走る区間も存在します。ラインラント＝プファルツ州に入り、ヴィンデック付近で再びノルトライン＝ヴェストファーレン州に戻り、最終的にはボンの北、ニーダーカッセルのモンドルフ地区でライン川に合流します。合流地点の標高はわずか45mです。

広大な流域

ジーク川の流域面積は2,832km²に及び、ゲルギシェ地方、ヴァエスターヴァルト、ロタール山地、ライン平野を含みます。流域の大部分はノルトライン＝ヴェストファーレン州に属し、一部がラインラント＝プファルツ州です。南北60km、東西85kmに広がる流域は、多様な地形と植生を育んでいます。

分水嶺としての役割

上流域、ロタール山地の水源付近は、ライン＝ヴェーザー分水界となっています。ジーク川の源流からわずか数キロメートル圏内には、ラーン川やエーダー川の源流も存在し、それぞれの川が異なる水系へと流れていきます。

下流域の風景と治水

ジークブルク付近で山間部を抜け、平野部へと流れ込むジーク川は、かつて洪水を頻繁に起こしていました。しかし、川沿いに広がる草地や湿地が洪水を緩和し、周辺の町への被害を最小限に抑えてきました。現在では、これらの地域はハイキングやサイクリングコースとして活用され、川自体はカヌー愛好家に親しまれています。

自然保護区としての河口

河口付近は1986年に自然保護区に指定され、ライン川に残された貴重な自然が保全されています。EUの動植物保護区にも指定されており、手厚い保護を受けています。河口付近では、ジーク川はライン川と約1.5kmにわたって平行に流れ、「ケムパー・ヴェルト」と呼ばれる岬を形成しています。

歴史的な治水事業

18世紀には、洪水を防ぐためにジーク川の河口を直線化する工事が行われましたが、これはライン川の河床を浅くし、かえって洪水を悪化させる結果となりました。その後、19世紀に河床を元に戻す工事が行われ、現在に至っています。

多様な植生

ジーク川の堤防に生育する植物は、川の流れとともに変化します。上流部では森林が広がり、下流部では草地が広がります。中流域では、リュウキンカやキショウブなどの湿地植物が見られ、ヨシやガマなどの水生植物も生育しています。

川の名前の由来

「Sieg」という名前は、ドイツ語の「勝利」ではなく、ケルト語の「速い流れ」を意味する「Sikkere」に由来するとされています。また、かつてこの地域に居住していたSigambrer族に由来するという説もあります。

流域の町

ジーク川は、以下の多くの町を流れ下ります。

ネトフェン
ジーゲン
ムーダースバッハ
ブラハバッハ
キルヒェン
ベッツドルフ
ヴァルメンロート
ニーダーヘーフェルス
ヴィッセン
ハム
エッツバッハ
アウ
ヴィンデック
アイトルフ
ヘンネフ
ジークブルク
トロースドルフ
ザンクト・アウグスティン
ボン
ニーダーカッセル（モンドルフ地区）

主要な支流

ジーク川には、多くの支流が流れ込んでいます。

フェルンドルフバッハ川（右）
ヴァイス川（左）
シェルデバッハ川（左）
ヘラー川（左）
エルプバッハ川（左）
ヴィッサー・バッハ川（右）
ニスター川（左）
エッツバッハ川（左）
ブレール川（右）
ハンフバッハ川（左）
ヴァーンバッハ川（右）
プライスバッハ川（左）
* アッガー川（右）

ジーク川は、その豊かな水と多様な生態系で、流域の人々の生活を支え続けています。

もう一度検索