ジーニアス (テレビドラマ)

ジーニアス（Genius）

『ジーニアス』は、2017年に放送を開始したアメリカ合衆国のテレビドラマシリーズです。各シーズンで異なる歴史上の著名な人物に焦点を当て、その生涯を緻密に描くアンソロジー形式を採用しています。このシリーズは、単に偉業を紹介するだけでなく、彼らがどのような人間であり、どのような時代を生きたのかを深く掘り下げています。日本ではナショナル ジオグラフィックを通じてシーズン1から3が放送され、今後のシーズン4はDisney+での配信が決定しています。

シーズン1：アルベルト・アインシュタイン

2017年に制作されたシリーズの第1弾は、『ジーニアス:世紀の天才 アインシュタイン』として知られています。世界的に名高い物理学者、アルベルト・アインシュタインの人生に光を当て、特に青年期（1894年）と中年期（1922年）という二つの重要な時代を描き出します。若かりし頃には親の反対を押し切って物理学の道を志す情熱が、壮年期には世界的な名声を得た一方で、ナチスの台頭によるユダヤ人迫害に直面する苦悩が描かれます。このシーズンは、ウォルター・アイザックソンの著書『アインシュタイン その生涯と宇宙』を原作としており、中年期のアインシュタインをジェフリー・ラッシュが、青年期をジョニー・フリンが演じました。また、彼の二度目の妻エルザや、最初の妻であり才気あふれるミレヴァ・マリッチといった、アインシュタインの人生に深く関わった人物たちも重要な役どころで登場します。

シーズン2：パブロ・ピカソ

2018年に放送されたシーズン2は、『ジーニアス：ピカソ』と題され、20世紀を代表する芸術家、パブロ・ピカソの91年間にわたる波乱に満ちた生涯を描写します。スペインでの幼少期から始まり、画家として開花したフランスでの青年期、そしてスペイン内戦や第二次世界大戦といった激動の時代をどのように生き抜いたのかを追体験できます。情熱的な中年期のピカソを演じたのはアントニオ・バンデラス、青年期をアレックス・リッチが務めました。シーズン1で青年期アインシュタインを演じたジョニー・フリンも、フランスの俳優アラン・キュニー役で再登場しています。ピカソの創作活動と複雑な人間関係を彩ったフランソワーズ・ジローやドラ・マールといった女性たちも物語の重要な要素となっています。

シーズン3：アレサ・フランクリン

2021年に制作されたシーズン3は、『ジーニアス：アレサ』として、伝説的な「ソウル・ミュージックの女王」、アレサ・フランクリンの人生の軌跡を辿ります。1942年生まれのアレサが、独学で音楽を習得し、数々の名曲を生み出し、グラミー賞を18度も受賞する成功への道のりが描かれます。「貴方だけを愛して」や「チェイン・オブ・フールズ」といった彼女の代表曲と共に、当時のアメリカ社会が抱えていた人種差別や反戦運動といった背景が丁寧に織り込まれています。アレサ役を演じたシンシア・エリヴォは、その圧倒的な歌唱力と演技でキャラクターに命を吹き込みました。彼女の父である牧師のC・J・フランクリンなど、彼女の人生を支え、あるいは影響を与えた人々も描かれています。

評価と受賞

『ジーニアス』シリーズは、その高いドラマ性や出演者の演技力に対して、多くの評価を受けています。シーズン1は第69回プライムタイム・エミー賞において、主演男優賞にノミネートされたジェフリー・ラッシュを含む全10部門でノミネートされました。また、ジェフリー・ラッシュは第75回ゴールデングローブ賞でも主演男優賞候補となっています。シーズン2も第70回プライムタイム・エミー賞で作品賞や主演男優賞ノミネート（アントニオ・バンデラス）を含む7部門にノミネートされるなど、主要なテレビドラマ賞で高く評価されています。シーズン3では、NAACPイメージ・アワードで5部門にノミネートされ、アレサの父を演じたコートニー・B・ヴァンスが助演男優賞を受賞するなど、多様な側面でその功績が認められています。

このシリーズは、科学、芸術、音楽といった異なる分野で人類の歴史に大きな足跡を残した「天才」たちの、知られざる苦悩や情熱、そして彼らが生きた時代の社会情勢を浮き彫りにし、視聴者に深い洞察と感動を与えています。

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