スィゲトヴァール包囲戦

スィゲトヴァール包囲戦：文明を救った激戦

スィゲトヴァール包囲戦は、1566年にオスマン帝国軍がハプスブルク帝国支配下のハンガリー王国スィゲトヴァールを包囲した戦いです。ハンガリー王国軍を率いるニコラ・シュビッチ・ズリンスキと、オスマン帝国軍を率いるスレイマン1世が激突しました。

戦いの背景

1526年のモハーチの戦いでハンガリー王国軍がオスマン帝国軍に敗北。ハンガリーは独立を失い、ハプスブルク家とオスマン帝国の間で争奪されることになります。ハプスブルク家のフェルディナント1世がハンガリー王に選出されますが、ハンガリー東部ではサポヤイ・ヤーノシュがハンガリー王を名乗り、フェルディナントと対立。スレイマン1世はサポヤイ・ヤーノシュを支援し、第一次ウィーン包囲を行うも失敗に終わります。

スレイマン1世最後の遠征

1566年、スレイマン1世は最後の遠征を開始。大軍を率いてハンガリーへ向かいます。一方、神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世はトルコ税の増額を取り付けますが、帝国内の問題で出陣が遅れます。スレイマン1世は、将軍ニコラ・シュビッチ・ズリンスキの脅威を排除するため、彼の城スィゲトヴァールへと矛先を向けました。

包囲戦の始まり

1566年8月2日、オスマン軍がスィゲトヴァールに到着し、包囲を開始。防衛軍は果敢に応戦し、オスマン軍に大きな損害を与えます。しかし、スレイマン1世率いる本軍も到着し、スィゲトヴァール攻撃に加わります。ズリンスキは僅か2300人の兵で、15万人以上のオスマン軍を迎え撃ちました。

スィゲトヴァールは、旧市街、新市街、城塞の3つの地域に分かれており、それぞれが橋や土手道で接続されていました。難攻不落の要塞でしたが、オスマン軍の猛攻により徐々に追い詰められていきます。ウィーンからの援軍は期待できず、ズリンスキらは絶望的な状況に立たされました。

壮絶な攻防

1か月以上にわたる激しい戦闘の末、ズリンスキらは旧市街へ撤退し、最後の抵抗を試みます。スレイマン1世はズリンスキに降伏を促しますが、ズリンスキは拒否。マクシミリアン2世率いる大軍も救援に駆け付けることはありませんでした。9月6日、スレイマン1世が陣没。しかし、オスマン軍はスルタンの死を隠し、総攻撃を仕掛けます。

最後の戦い

9月7日、オスマン軍による総攻撃が開始。要塞は砲撃により破壊され、ズリンスキは最後の演説を行います。ズリンスキらは城内への敵の侵入を許さず、門を開けて大砲を水平射撃。多くの敵を殺害します。ズリンスキは残存兵と共に突撃し、戦死。一部の兵は城内に撤退しますが、オスマン軍に殺害されました。ズリンスキは死を覚悟して城内の火薬に点火するよう命じており、オスマン軍がなだれ込んだ時に火薬庫が爆発し、多数のオスマン兵が犠牲となりました。

戦いの後

ズリンスキ以下、防衛にあたった3000人のほぼ全員が戦死。オスマン軍も甚大な被害を受け、2万人から3万5000人の兵士を失いました。スレイマン1世の遺体はコンスタンティノープルへ送られ、後継者セリム2世が帝位を継承。スィゲトヴァール包囲戦は、オスマン帝国のウィーン侵攻を遅らせる結果となりました。

1568年、オスマン帝国と神聖ローマ帝国の間でアドリアノープル条約が締結。両者は和平を結びましたが、オスマン帝国はハンガリーで領土を拡大しました。

文化的な影響

スィゲトヴァール包囲戦は、多くの詩やオペラの題材となり、語り継がれています。ニコラ・ズリンスキの『スィゲトの危難』は、17世紀文学の代表的作品として知られています。イヴァン・ザイツ作曲のオペラ『ニコラ・シュビッチ・ズリンスキ』は、クロアチアで最も人気のある作品です。

スィゲトヴァール包囲戦は、小勢で大軍に立ち向かった英雄たちの物語として、今も人々の心を捉え続けています。

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