スイッチを押すとき

『スイッチを押すとき』

作家・山田悠介による小説『スイッチを押すとき』は、2005年8月15日に文芸社から発表されました。刊行直後から異例のスピードで増刷が決定するなど、大きな反響を呼び、その後、舞台、テレビドラマ、そして映画と、様々なメディアで展開されました。

あらすじ

物語は、青少年自殺抑制プロジェクトセンターの監視員である南洋平の視点から描かれます。この施設では、特殊な環境下に置かれた4人の少年少女が、自身の命を絶つための「赤いスイッチ」を所持させられ、人体実験の対象となっていました。極限的な孤独と絶望の中で、被験者たちが次々とスイッチを押すことが予測されていたにも関わらず、収容された4人の少年少女は、なんと7年もの間スイッチを押さずに生き続けていたのです。彼らが生きることを強く願う理由を知った南は、共に施設からの脱出を決意します。しかし、彼らを待ち受けていたのは、過酷な現実でした。国のプロジェクトに反感を抱きつつも監視員として働く南と、それぞれの事情を抱えながらも生きることを諦めない少年少女たちの、切なくも衝撃的な運命が描かれます。

主要登場人物

南洋平
27歳の施設監視員。痩せ形で、薄い眉にかかる髪、二重の目、小さめの鼻と口といった特徴的な容姿をしています。施設の非人道的なプロジェクトに強い疑問と反感を抱きながらも、監視員という立場に葛藤を感じています。
高宮真沙美
施設に収容されている17歳の少女。おかっぱ頭に大きな瞳が印象的で、常に明るく振る舞っています。5歳の時に母親に捨てられた過去を持ちます。
新庄亮太
17歳の少年。癖のある髪型と鋭い目つきが特徴。監視員の南や真沙美に対して、突き放すような態度をとることが多いですが、その内には優しい心を秘めています。
小暮君明
17歳の少年。穏やかで大人しい性格。脚が不自由なため車椅子を使用しています。絵を描くことが得意で、施設に収容されてからも絵を描き続けています。
池田了
17歳の少年。背が高く、つりあがった目が特徴的です。施設に収容される以前、親友だった矢田遥という少女に強い想いを抱いています。

書籍情報

ハードカバー：文芸社より2005年8月1日に刊行されました。
文庫本：角川文庫（2008年10月25日）、河出文庫（2016年2月8日、「スイッチを押すとき 他一篇」として短篇「魔子」を併録）から刊行されています。

メディアミックス

小説の発表後、『スイッチを押すとき』は様々な形でメディア展開されました。

舞台：
2006年7月、「スイッチを押すとき〜君達はなぜ生きているんだ?〜」のタイトルで青山円形劇場にて上演されました。同年12月にはDVD化もされています。2007年10月には新国立劇場にて再演され、こちらも翌年4月にDVDが発売されました。脚本・演出は岡本貴也氏が手掛けました。

テレビドラマ：
2006年7月20日から毎日放送で、毎週木曜深夜に放送（全10回）。放送翌日にはGyaOでも配信されました。南洋平役を成宮寛貴氏が演じ、高宮真沙美役は木南晴夏氏、新庄亮太役は川本貴則氏、小暮君明役は若葉竜也氏、池田了役は原田琢磨氏が担当しました。監督は白川士氏、脚本は杉山嘉一氏です。

映画：
2012年に公開されたサスペンスミステリー映画です。中島良氏が監督を務め、主演は小出恵介氏（南洋平役）と水沢エレナ氏（高宮真沙美役）。被験者役には佐野和真氏、與真司郎氏、阪本奨悟氏、太賀氏、菅野莉央氏らが名を連ねています。極限状態をリアルに表現するため、クランクイン前のリハーサルや、鎌倉の廃墟でのロケが行われました。脚本は舞台版と同じく岡本貴也氏が担当。主題歌にはNICO Touches the Wallsの「Endless roll」が起用されました。この映画は2012年5月25日にDVDが発売されています。

様々な媒体で展開された本作は、生と死、そして人間の尊厳という普遍的なテーマを問いかけ、多くの読者や観客に強い印象を残しました。

もう一度検索