スカイキッドブラック魔王

『スカイキッドブラック魔王』（原題：Dastardly and Muttley in Their Flying Machines）は、1969年、アメリカでハンナ・バーベラ・プロダクションによって制作された、30分のテレビアニメーションです。同制作会社の『チキチキマシン猛レース』に登場する人気キャラクター、ブラック魔王と彼の相棒ケンケンを主人公に据え、スピンオフ作品として制作されました。

本作では、ブラック魔王率いる飛行隊が、第一次世界大戦下のアメリカ軍の伝書鳩「ポッピー」を捕獲し、機密文書を奪うという任務に挑みます。ブラック魔王、部下のビックリとヘッピリ、そして相棒のケンケンの個性豊かな面々が、様々な奇想天外な飛行マシンで空中戦を繰り広げます。毎回、彼らの作戦は失敗に終わり、見ている者を笑わせるドタバタ劇が展開されます。

ストーリーは、AパートとBパートから構成され、さらに毎回短いショートエピソードが挿入されます。このショートエピソードでは、彼らの愛車であるゼロゼロマシンが一瞬だけ登場し、『チキチキマシン猛レース』との繋がりを感じさせる演出がなされています。

登場人物は、個性豊かな面々が揃っています。ブラック魔王は飛行隊のリーダー格ですが、常に作戦は失敗し、部下や上司である大臣から叱責を受けることもしばしば。彼の相棒であるケンケンは、ブラック魔王に対して皮肉めいた態度を取りながらも、彼を最低限助ける、どこか憎めないキャラクターです。ビックリは飛行隊の発明家で、独特のしゃっくり混じりの話し方が特徴。ヘッピリは臆病者で、すぐに逃げ出そうとしますが、いつもケンケンに連れ戻されます。そして、彼らのターゲットであるポッピーは、機密文書を持つアメリカ軍の伝書鳩です。日本語版では、ポッピーは魔王たちを挑発するような発言をするなど、よりコミカルなキャラクターとなっています。

声優陣も豪華です。原語版では、ポール・ウィンチェルとドン・メシックの2人が主要キャラクターの声を担当しました。日本語版では、ブラック魔王を大塚周夫、ケンケンを神山卓三、ビックリを大泉滉、ヘッピリを関敬六、ポッピーを増山江威子、大臣を上田吉二郎が担当するなど、実力派声優陣によって演じられています。ナレーターは鈴木やすしです。

日本での放送は1970年8月3日にNETテレビ（現・テレビ朝日）で開始され、その後も東京12チャンネル（現・テレビ東京）の『マンガのくに』枠など、様々な局で再放送されました。東京12チャンネルでは一時『ブラック魔王 空の猛レース』と改題されましたが、その後は元のタイトルに戻っています。カートゥーンネットワークでも再放送された実績があります。

主題歌も魅力の一つです。日本版では、A面「スカイキッド・ブラック魔王」、B面「ケンケン大空を行く」という2曲が制作されました。A面曲は、イントロに阿波踊りの「よしこの」のメロディーが用いられている、ユニークな楽曲です。オープニングとエンディングでは、曲の構成やブラック魔王のセリフが使い分けられていたのも特徴です。

『スカイキッドブラック魔王』は、ドタバタ劇と個性豊かなキャラクター、そして軽快な主題歌が魅力のアニメーション作品です。『チキチキマシン猛レース』ファンはもちろん、初めて観る人にもおすすめできる、笑いと冒険に満ちた作品となっています。独特のユーモアのセンスと、キャラクターたちの魅力が詰まった、何度でも楽しめるアニメーションとして、現在も高い人気を誇っています。

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