スカラー計算機

スカラー計算機とは？

スカラー計算機は、一度に一つの命令しか処理できない計算機です。心臓部となる実行ユニットは一つしかなく、命令は順番に実行されます。これは、複数の命令を同時に処理する並列処理方式とは対照的です。まるで職人技のように、一つ一つの命令を丁寧に実行していく様子を想像してみてください。

スカラー計算機と他の計算機との違い

スカラー計算機と比較される計算機として、大きく分けてベクトル計算機とスーパースカラー計算機があります。

ベクトル計算機

ベクトル計算機は、パイプライン処理と呼ばれる技術を用いて、複数のデータを一度に処理できます。まるで、工場のベルトコンベアのように、複数のデータが流れ作業的に処理されていきます。そのため、大量のデータを高速に処理するのに適しています。

スーパースカラー計算機

スーパースカラー計算機は、複数の命令を同時に実行できる計算機です。複数のユニットを備え、それぞれが並列して命令を実行することで、処理速度を向上させています。これは、複数の職人が同時に作業を行うようなイメージです。

スカラープロセッサ

スカラープロセッサは、コンピュータの中枢であるCPUの一種で、一度に一つのデータしか処理できません。整数や浮動小数点数といったデータ項目を一つずつ処理していくため、ベクトルプロセッサと比べて処理速度は劣りますが、シンプルな設計が特徴です。Intel 486はスカラープロセッサの代表的な例です。

スカラープロセッサの分類

スカラープロセッサは、フリンの分類法ではSISD（Single Instruction, Single Data）プロセッサに分類されます。これは、単一の命令で単一のデータを処理することを意味します。これは、単一の命令で複数のデータを処理するSIMD（Single Instruction, Multiple Data）プロセッサであるベクトルプロセッサとは対照的です。

スカラーという用語の歴史

コンピュータの世界で「スカラー」という用語が使われ始めたのは、ベクトルプロセッサが登場した1970～80年代頃です。当時、新しいベクトルプロセッサと従来のスカラープロセッサを区別するために用いられました。

スーパースカラープロセッサ

スーパースカラープロセッサは、プロセッサ内部の複数のユニットを同時に使用することで、複数の命令を同時実行できます。例えば、Intel P5やCortex-M7などはスーパースカラープロセッサであり、現代の多くのCPUがこれにあたります。ただし、これは複数のCPUコアを持つマルチコアプロセッサとは異なります。スーパースカラープロセッサでは、一つのCPU内に複数のユニットがあり、それらが同時に動作することで処理効率を高めています。算術論理演算ユニットや乗算器といった、CPU内部の様々な実行リソースが同時に活用されることで、高速な処理を実現しています。

まとめ

スカラー計算機は、基本的な計算機アーキテクチャですが、現代の高度な計算機アーキテクチャの基礎となっています。ベクトル計算機やスーパースカラー計算機などの発展によって、計算能力は飛躍的に向上しましたが、スカラー計算機の原理を理解することは、コンピュータの動作を理解する上で非常に重要です。

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