スキー指導者

スキー指導者は、スキーヤーの滑走技術向上や安全確保に関する指導を行う専門職です。主に公益財団法人全日本スキー連盟（SAJ）が公認するSAJ公認スキー指導員および準指導員、そして公益財団法人日本スポーツ協会とSAJが連携する公認スポーツ指導者制度に基づく認定指導者を指します。このほか、一部の都道府県スキー連盟などが認定する地域限定の認定スキー指導員や、日本プロスキー教師協会（SIA）に所属するスキー教師も広義のスキー指導者に含まれることがあります。

本項目では、主にSAJに関連する資格制度を中心に解説します。

SAJ公認資格

SAJ公認のスキー学校で指導を行うためには、原則としてSAJ公認スキー指導員または準指導員の資格が必須とされています。ただし、地域によっては都道府県連盟などが認定する独自の指導員資格でも活動が認められる場合があります。

SAJ公認スキー準指導員

準指導員資格は、都道府県連盟が主管して開催されるSAJスキー準指導員検定会に合格することで取得できます。検定会は原則として年1回、通常3日間の日程で行われ、「理論」と「実技」の両方の試験が含まれます。合格発表は原則として検定会終了の翌日に行われます。

受検するためには、受検年度にSAJ会員であり、かつ4月1日時点で18歳以上である必要があります。また、前年度までにSAJスキーバッジテスト1級（プライズテストを含む）を取得していること、そして所属する加盟団体が主催する指定の養成講習（基礎理論12時間、指導実習12時間、実技実習22時間）を修了していることが条件となります。養成講習には有効期間が定められています。

特定の資格を持つ者（医師、看護師など）は養成講習における救急法の受講が免除される特例があります。また、SIAのアルペンスキー・ステージⅢとして一定期間以上活動した実績がある場合、SAJへの会員登録を経て、加盟団体の推薦とSAJ教育本部理事会の承認により準指導員資格を取得できる特別な制度も存在します。さらに、準指導員資格取得後20年以上経過し、かつ60歳を超えた功労者は、加盟団体長の推薦に基づき功労スキー準指導員として顕彰されることがあります。

SAJ公認スキー指導員

指導員資格は、SAJが主催し、都道府県連盟が協力して行うSAJスキー指導員検定会に合格することで取得できます。この検定会は準指導員検定会と異なり、全国の限られた会場（原則5箇所）で行われ、受検者は希望する会場を選んで受検します。検定会の日程は原則3日間で、予備日が1日設けられます。実施要領はSAJによって定められ、毎年公表されます。

指導員検定会の受検資格は、受検年度にSAJ会員であり、4月1日時点で21歳以上であることに加え、SAJ公認スキー準指導員資格を取得しており、その合格年度を含めず2年以上経過していることが基本条件となります。また、加盟団体が主催する指定の養成講習を修了していることも必須です。この養成講習の有効期間は3年間です。

ただし、準指導員資格を持たない場合でも、全日本選手権や国際スキー連盟（FIS）公認大会などで優秀な成績を収めた競技実績のある者は、加盟団体長の推薦とSAJ教育本部理事会の承認により、特別推薦として指導員検定会を受検することが認められる場合があります。

外国の国家検定スキー教師資格を持つ者や、SIAのアルペンスキー・ステージⅣとして長期間活動した実績のある者は、SAJへの会員登録と加盟団体の推薦、SAJ教育本部理事会の承認を経て、指導員資格を取得できる特例制度があります。指導員検定の合格者は、日本スポーツ協会が認定するスキー指導員およびスキー教師資格取得の専門科目免除を受けられる場合があります。準指導員と同様、資格取得後20年以上経過し、かつ60歳を超えた功労者は、功労スキー指導員として顕彰される制度があります。

資格取得後の義務と規定

SAJ公認の指導員および準指導員、並びに日本スポーツ協会との連携による認定指導者は、資格を維持するためにいくつかの義務を負います。最も重要な義務の一つとして、2年に1回（隔年）以上、所属する加盟団体が主管するスキー指導者研修会に参加し、修了することが定められています。また、加盟団体が行う事業に優先的に参加することも求められます。

この研修会への参加義務を2年連続で果たせなかった場合、資格は停止されます。資格停止期間中は指導活動を行うことができません。資格停止は、その後改めて研修会を受講し、修了することで解除されます。なお、SAJが定める中央研修会やスキー大学などの特定行事への参加も、研修会を修了したものと同等に扱われます。ただし、功労スキー指導員・準指導員は研修会の参加義務が免除されます。

資格は、SAJ会員登録の喪失、SAJ規約違反による指導者としての品位を損なう行為、または資格の年次登録料を期限までに納入しない場合に、理事会の決定により喪失することがあります。資格を喪失した場合でも、喪失から1年以内であること、SAJ会員登録を完了していること、そして加盟団体長が再認定を承認していること、という条件を満たせば、規定の手続きと申請料納付を行うことで資格の再認定を申請することが可能です。再認定された場合、資格は翌年度から有効となります。

認定スキー指導者

SAJ全体としての認定指導員制度は現在廃止されていますが、一部の加盟団体が必要に応じて独自の認定指導員制度を設けている場合があります。例えば、公益財団法人北海道スキー連盟（SAH）にはSAH認定スキー指導員の制度が存在し、独自の検定会が実施されています。これらの地域限定資格に関する認定規定、活動範囲、資格継続の条件などは、認定を行っている加盟団体によって異なります。多くの場合、その団体が所属する地域内でのみ有効な資格となります。

新型コロナウイルス感染症流行に伴う特別措置

2019年末以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、スキー指導者の資格制度にも影響を及ぼしました。大規模イベントの中止要請などを受け、2020年以降、予定されていた検定会や研修会が中止または延期となる事態が相次ぎました。

これに対応するため、SAJではいくつかの特別措置を講じました。例えば、2020年度に検定会が中止となり受検できなかった者に対して、翌年度以降の受検機会を提供する措置が取られました。また、養成講習時間の全てを修了できなかった受検者については、不足があっても検定受検を認め、合格した場合には、資格取得後2年間連続で指導者研修会を受講することを代替措置とする運用が行われました。これらの措置に反した場合、資格の取り下げなどの処分があり得る旨が示されました。

指導者研修会に関しても変更がありました。特に2021年度および2022年度においては、理論研修について会場での開催を避け、オフィシャルブック付属のDVDやSAJ公式YouTubeチャンネルで配信される動画を視聴するeラーニング方式が採用されました。実技研修は感染予防対策を講じた上で会場にて実施され、この実技研修の修了をもってその年度の研修を全て修了したものとみなされました。

各種検定会や研修会について、申し込み要項には感染拡大状況により予定変更や中止の可能性が明記され、最新情報の確認が推奨されました。

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