スギゴケ

スギゴケ（杉苔、Polytrichum juniperinum）は、コケ植物の一種であり、その名の通りスギの枝を思わせる外観が特徴です。ただし、厳密にはスギゴケ属の1種 Polytrichum juniperinum の標準和名をスギゴケとしますが、一般的には、スギゴケ属（Polytrichum）および近縁のニワスギゴケ属(Pogonatum)、またはスギゴケ科に属する種の総称として用いられることもあります。総称としてのスギゴケについてはスギゴケ類を参照してください。

概要

スギゴケは、直立する茎葉体を持つコケで、細い葉が茎の周りに密集して生えています。この様子がスギの枝に似ていることから、その名が付けられました。地上に密生して群落を形成し、緑色の絨毯を敷き詰めたような景観を作り出します。

さく柄は真っ直ぐに上へ伸び、その先端に胞子を収めるさく（胞子嚢）が形成されます。さくは円柱形に近く、上部には尖った帽が被さっています。この帽の表面は、下向きの長い毛で覆われていることが多く、スギゴケの特徴的な外観を形作っています。

生息場所と近縁種

スギゴケやその近縁種は、日本では比較的標高の高い場所に自生しています。しかし、身近に見られるスギゴケとされるものの多くは、コスギゴケ(Pogonatum inflexum、カギバニワスギゴケとも)であることが多いです。コスギゴケは、スギゴケに比べて小型で、より身近な環境に適応しています。

また、大型で10cmを超えるウマスギゴケ（Polytrichum commune Hedw.）やオオスギゴケ（Polytrichum formosum Hedw.）は、その美しい姿から日本庭園の景観を彩るために利用されています。これらの大型種は、庭園の苔庭などで存在感を放ち、自然な雰囲気を演出します。

特殊な近縁種：ハミズゴケ

近縁種のハミズゴケ(Pogonatum spinulosum)は、他のスギゴケ類とは異なり、茎葉体が退化しており、ほとんどさくの基部にわずかに見える程度です。ハミズゴケは、光合成をよく発達した原糸体で行うという特徴を持っています。そのため、ハミズゴケが生育する周囲の地表は、緑色に染まります。これは、ハミズゴケが光合成によって作り出した色素が、地表に広がっているためです。

もう一度検索