スコット自由独立州

スコット自由独立州：南北戦争下のユニークな抵抗

スコット自由独立州、または単にスコット州として知られるこの地域は、アメリカ南北戦争初期の1861年、テネシー州内で特異な存在として誕生しました。南部連合に属するテネシー州内に位置しながら、反奴隷制・親合衆国というユニオニストの立場を貫いたスコット郡が、テネシー州の合衆国からの分離に反抗し、自ら独立を宣言したのです。しかし、この独立は南部連合はもちろん、北部の合衆国からも承認されませんでした。スコット「州」は、戦争中、他の東部テネシーの大部分と同様、北部の飛び地のような状況でした。独立は公式には認められませんでしたが、1986年になってようやく分離状態を解消する法律が制定され、テネシー州に復帰しました。

背景：奴隷制度に対する地域の抵抗

スコット郡は、もともとテネシー州内でも奴隷の数が少ない地域であり、独立を宣言した時点ではわずか61人しか奴隷が登記されていませんでした。テネシー州内で奴隷人口が100人を下回る郡は、スコット郡を含めてわずか2郡のみでした。テネシー州自体、資源や政治的な分裂志向が強く、南部の州の中では最後にアメリカ連合国への参加を決めた州でした。スコット郡が属する東部テネシーは、中部や西部と比べて奴隷への依存度が低く、地域の産業経済を守るために合衆国政府と戦うという意識は希薄でした。むしろ、東部テネシーの住民は合衆国の連邦制を維持し、彼らの生活に対する政府の介入を最小限に抑えることを望んでいたのです。そのため、テネシー州内の他の地域の裕福なビジネスマンやプランテーション農場主が州の政治経済を牛耳っていることに不満を抱いていました。

自由独立州の歴史：独立宣言と抵抗

1861年 6月4日、ハンツヴィルの郡役所の階段上で、アンドリュー・ジョンソン上院議員（後の合衆国大統領。民主党議員で自身も奴隷所有者でしたが、南北戦争では合衆国とエイブラハム・リンカン大統領を支持）が演説を行いました。「（南部の分離主義者たちが）最も恐れているのは、北部の自由人ではなく、南部の自由人なのだ」という言葉は、当時の状況を象徴しています。ジョンソンの演説の4日後、テネシー州で連邦からの離脱の是非を問う住民投票が行われました。その結果、テネシー州は南部連合に組することになりましたが、スコット郡に限ると、連邦残留541票、離脱19票と、圧倒的な差で連邦残留を支持しました。同年中に、スコット郡総会は全会一致でテネシー州からの分離を可決し、急造りの「スコット独立州」が結成されました。これにより、スコット郡は北部の合衆国に忠実な飛び地となったのです。

テネシー州政府の反応：討伐隊の派遣と撤退

スコット「州」の独立宣言に対し、テネシー州知事イスハム・ハリスは、直ちに1700人の兵を集めて「反乱」討伐隊を組織し、ハンツヴィルに派遣しました。しかし、住民の激しい抵抗に遭い、討伐隊はハンツヴィルに到達できずに撤退せざるを得ませんでした。

南北戦争中のスコット：ゲリラ戦と抵抗

スコット一帯は戦略的価値が乏しく、山間で孤立した土地であったため、1862年8月13日の小規模なハンツヴィルの戦いを除いて、南北戦争中に大規模な軍勢が衝突するような戦いの場となることはありませんでした。このハンツヴィルの戦いでは、2000人の敵に直面し、脱走や戦闘で多くの兵を失っていた合衆国軍のウィリアム・クリフト大佐が、残った約20人の兵を連れて街を放棄し、後背の森へ撤退しました。その後、ボロボロの状態ながらなんとか部隊を再編したクリフトは、1862年の残りの大部分をゲリラ戦術で戦い抜きました。その後もこの地域では、ブッシュワッカーによるゲリラ戦や散兵戦が行われ、隣人同士で残忍な闘争が繰り広げられました。スコットの男性住民は合衆国軍に志願し、第七テネシー志願歩兵連隊の中核を成しました。

その後：連邦主義の地盤と復帰

南北戦争終結後の1868年[[アメリカ合衆国大統領選挙]]や1872年大統領選挙では、いずれも共和党候補ユリシーズ・グラントがスコットの票の9割以上を獲得しました。20世紀に入っても、スコット郡は強固な共和党・連邦主義の地盤であり続けました。
1986年、スコット郡は正式に分離宣言を無効とし、同時にテネシー州への再加入を陳情し、儀礼的に承認されました。ただし、テネシー州、合衆国、連合国のいずれもスコットの分離独立を認めたことはありません。

痕跡：道路標識

ハンツヴィルの近くを通るSR 63の道路標識には、現在でもスコット自由独立州の歴史を伝える記述が残されています。

スコット自由独立州