スズキ・ヴェクスター

スズキ ヴェクスター：取り回しの良い実用スクーターの歴史

スズキが1994年から2007年にかけて製造販売していたスクーター「ヴェクスター」は、軽二輪（150cc）と原付二種（125cc）の2モデルがラインナップされていました。車名は「ベクトル（進路、方向）」と「スター（星、人気、将来）」を組み合わせた造語で、明るく、覚えやすい名称となっています。

ヴェクスターの特徴：取り回しと収納性

ヴェクスターは、250ccクラスのビッグスクーターと比較して車体がコンパクトに設計されており、最小回転半径1.9mという取り回しの良さが魅力でした。50ccスクーターに匹敵する取り回しやすさで、街中での走行に適していました。

一方で、収納スペースは充実しており、シート下にはフルフェイスヘルメットを横向きに収納できるトランクを備えていました。ハンドル下にも収納スペースがあり、さらにコンビニフックやリアキャリアも標準装備。実用性を重視した設計と言えるでしょう。ただし、ハンドル下ボックスは形状が複雑なため、小物の収納に限定されていました。足元はフラットフロアで広々としており、コンビニフックを活用することで、ある程度の荷物も積載できました。

光量も十分確保されており、30W/30Wクリプトンバルブ2灯のヘッドライトは、同クラスの他の車両と比較しても明るく、夜間の走行も安心でした。ポジションランプも標準装備です。センタースタンドとサイドスタンドの両方が装備されていた点も、使い勝手の良さにつながっていました。

エンジンは、150ccモデルが4サイクル152cc、125ccモデルが4サイクル124ccで、スムーズな走行性能を発揮していました。オイル容量は0.8リットルで、メーカー推奨の交換時期は初回1ヶ月または1000km、以降は1年または6000km毎でした。

シート高は、50ccスクーターだけでなく、一部のビッグスクーターよりも高く設定されていました。そのため、足つき性には注意が必要でした。シート自体は大きめに設計されており、二人乗りにも対応していましたが、快適性はビッグスクーターには及ばないものでした。

ヴェクスターの遍歴と生産終了

ヴェクスターは、1994年7月に125ccモデル、同年10月に150ccモデルが発売されました。その後、1995年、1997年、1998年、2000年、2001年、2003年、2005年、2007年と幾度かのマイナーチェンジが行われました。マイナーチェンジの内容は、トランク照明の追加、カラーバリエーションの変更、スロットルポジションセンサーとキャブレターの改良による加速性能の向上、新排ガス規制への対応、コンビニフックの追加、リアキャリアの共通化など多岐に渡ります。

2005年には125ccモデルが、そして2007年8月には150ccモデルも生産終了となりました。生産終了の背景には、アドレスV125の発売と入れ替わりによる生産終了（125cc）や、強化された排ガス規制への対応（150cc）が挙げられます。2007年2月にはヘッドライト部の配線不良によるショートの危険性を指摘するリコールも行われています。

まとめ

ヴェクスターは、取り回しの良いコンパクトな車体と、実用的な収納スペースを両立させたスクーターとして、多くのライダーに支持されました。10年以上にわたる販売期間と、何度かのマイナーチェンジを経て、スズキのスクーター史にその名を刻んでいます。生産終了から年月が経ちましたが、その高い実用性と個性的なデザインは、今も多くの人の記憶に残っていることでしょう。

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