スズメバチ科

スズメバチ科 (Vespidae) について

スズメバチ科は、膜翅目スズメバチ上科に属する昆虫のグループです。この科には、一般的に「ハチ」として認識されることの多い、黄色と黒の縞模様を持ち毒針を持つスズメバチ亜科やアシナガバチ亜科のような真社会性の狩りバチが含まれます。また、単独で生活するドロバチ亜科など、多様な生態を持つグループも存在します。

分布と多様性

スズメバチ科は、亜寒帯から熱帯まで世界中に広く分布しており、約5000種もの多様な種が含まれています。この多様性は、彼らが様々な環境に適応してきた結果と言えるでしょう。

下位分類

スズメバチ科は、一般的に以下の6つの亜科に分類されます。

アシナガバチ亜科 (Polistinae)
スズメバチ亜科 (Vespinae)
ドロバチ亜科 (Eumeninae)
ハラホソバチ亜科 (Stenogastrinae)
ハナドロバチ亜科 (Masarinae)
サバクドロバチ亜科 (Euparagiinae)

さらに、これらの亜科から、Gayellinae（ハナドロバチ亜科のGayellini族）とZethinae（ドロバチ亜科のZethini族）を独立した亜科として扱う場合もあり、その場合は8亜科に分類されます。

日本では、上記のうちアシナガバチ亜科、スズメバチ亜科、ドロバチ亜科の3亜科が確認されています。

社会性

スズメバチ科は、社会性の進化を研究する上で重要なモデル生物として注目されています。科内には、様々な程度の社会性を持つ種が存在します。

サバクドロバチ亜科: 単独性
ハナドロバチ亜科: 単独性
ドロバチ亜科: 大部分が単独性、一部が亜社会性
ハラホソバチ亜科: 種によって様々な程度・様式の社会性
アシナガバチ亜科: 真社会性
スズメバチ亜科: 真社会性

生態

真社会性のスズメバチ（スズメバチ亜科とアシナガバチ亜科の大部分、ハラホソバチ亜科の一部）は、女王バチと多数の働きバチがコロニーを形成して生活します。温帯では、通常、春に女王バチが巣を作り始め、働きバチの労働によって、秋までに次世代の女王バチとなるメスとオスが生産されます。冬が近づくと営巣活動を終え、翌年の女王バチのみが越冬します。

一方、熱帯や亜熱帯に生息する種の中には、ミツバチのように分封によって新しい巣を作るものもいます。

ドロバチ亜科やサバクドロバチ亜科のハチは、幼虫の餌としてガの幼虫などを麻酔して巣に運び貯蔵するカリバチです。ハナドロバチ亜科は、花蜜と花粉を幼虫の餌として利用するという、ハナバチとは独立した進化を遂げました。

単独性ハチの巣には、地面や枯れ枝の髄に穴を掘る掘坑性、泥などで壷や瓶を作る築造性、竹筒や樹幹にある虫の脱出孔などを利用する借坑性の3つのタイプがあります。

巣の材料として、単独性の多くは泥を使用しますが、ドロバチ亜科の一部は生きた葉を、スズメバチ亜科、アシナガバチ亜科、ハラホソバチ亜科の一部は枯れ木から削り取った植物繊維を噛み砕いて作ったパルプを利用します。

アシナガバチ亜科とスズメバチ亜科は、巣を守るために攻撃性が高く、特に夏から秋にかけて人への刺傷被害が多く発生します。また、オオスズメバチのように養蜂業に脅威となる種も存在します。しかし、多くの種はチョウやガの幼虫を捕食することで、農業害虫の個体数抑制や自然生態系のバランス維持に貢献しています。

外来種問題

スズメバチ科は、外来種としても問題となっています。ニュージーランドでは、ヨーロッパクロスズメバチが侵入したことで生態系や畜産業に被害が出ています。また、ツマアカスズメバチはヨーロッパや韓国に侵入し、生態系や養蜂業に被害を与えています。日本では対馬に定着していますが、本土への侵入を防ぐための対策がとられています。北米ではオオスズメバチが確認され、問題となっていますが、アメリカでは徹底的な駆除が行われ、根絶が発表されました。

スズメバチ科は、その多様な生態と社会性、外来種問題など、様々な側面から興味深い研究対象となっています。

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