スタンレー・スチーマー

スタンレー・スチーマー：蒸気の力で時代を駆け抜けた自動車

スタンレー・スチーマーは、スタンレー自動車会社によって製造された蒸気自動車です。双子の兄弟、フランシス・E・スタンレーとフリーラン・O・スタンレーによって生み出されました。彼らは元々、イーストマンコダックの乾板販売事業を手掛けていましたが、自動車産業に参入し、1897年に最初の自動車を生産しました。

記録と歴史

1898年から1899年にかけて、スタンレーはアメリカ国内のどの自動車会社よりも多い200台以上を販売しました。その後、彼らは設計の権利をロコモービルに売却。1906年には、スタンレー・ロケットがデイトナビーチで205.5km/hの世界記録を樹立し、Dewar Trophyを獲得しました。この記録は、蒸気自動車による速度記録として2009年8月まで破られることはありませんでした。

スタンレー自動車会社は、1902年から1917年まで操業を続けました。当時、ガソリン車が普及するまでの間、自動車業界で存在感を示しました。

設計と構造

初期のスタンレー/ロコモービル車は、軽量な木製車体を管状の鉄フレームに搭載し、リーフ式サスペンションを備えていました。蒸気は垂直煙管式ボイラーで発生させ、燃料には気化したガソリン（後に灯油）を使用し、バーナーで下から炙りました。ボイラーは幾層にもピアノ線が巻かれており、軽量でありながらも高い強度を誇っていました。

初期モデルの垂直煙管は銅製で、鏡板にあけられた上下の穴に通されていました。後のモデルでは、凝縮器や溶接された鋼製の煙管が使用されました。ボイラーには安全弁が備えられており、ジョイントからの漏れによって爆発を防ぐ構造となっていました。

エンジンは水平対向型2気筒の復動式で、スライド弁を使用した単式膨張型でした。エンジンから直接、後部に設置された差動歯車に直結したクランクを駆動し、チェーンで後輪に動力を伝達していました。

進化と終焉

後にスタンレー兄弟は、特許問題を回避するために新型の2気筒エンジンを開発し、後輪駆動の自動車を開発しました。後のモデルでは、アルミニウム製の車体も試作されました。1915年には凝縮器を搭載し、1906年には速度記録を樹立しました(1マイル28.2秒)。

1910年代半ばには、電気式始動装置を搭載し、燃費と出力に優れた内燃機関が登場しました。これにより、蒸気自動車は徐々に衰退していきました。

1917年、スタンレー兄弟は事業をプレスコット・ウォーレンに売却。最後のスタンレー・スチーマーは1927年まで生産されました。

大衆文化におけるスタンレー・スチーマー

『ザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ』の司会者であるジェイ・レノは、スタンレー・スチーマーを所有し、愛用しています。また、映画『カーズ』に登場するラジエーター・スプリングスの創設者、スタンレーの名前は、スタンレー・スチーマーに由来しています。

スタンレー・スチーマーは、蒸気自動車の歴史において重要な役割を果たしただけでなく、大衆文化にも影響を与えた魅力的な自動車です。

もう一度検索