スターキング デリシャス

スターキングデリシャス：甘さと歴史を秘めたリンゴ

スターキングデリシャスは、アメリカ合衆国で生まれたリンゴの品種です。その鮮やかな色と甘美な味わいは、かつて日本でも広く親しまれていました。ここでは、スターキングデリシャスの特徴、歴史、そして栽培が衰退していった背景について詳しく解説します。

特徴

スターキングデリシャスは、長円錐形の果実が特徴的です。その表面は濃い紫紅色に染まり、縦方向に縞模様が入ります。果実の大きさは280〜300g程度。

果肉は緻密で、口に入れると甘く芳醇な香りが広がります。柔らかくシャリッとした食感も魅力ですが、常温では軟化しやすいという特徴も持ち合わせています。

アメリカ国内では広く普及している品種ですが、日本ではより保存性の高い「ふじ」などの後継品種が登場したことで、その人気は衰退していきました。

歴史

スターキングデリシャスは、1921年にアメリカ合衆国ニュージャージー州で発見されました。当時、ルーイス・ムード氏が所有する果樹園で栽培されていたデリシャスの枝に、濃い紅色の果実が実ったことがきっかけです。

この発見に目を付けた Stark Brothers Nursuries 社によって、1924年に「スターキングデリシャス」と命名され紹介。1930年には品種登録に至りました。

日本へは、1929年に千疋屋の斎藤義政氏によって2本の苗木が輸入されました。斎藤氏は、青森県中津軽郡船沢村折笠（現在の青森県弘前市）の對馬竹五郎氏に栽培を依頼。1932年、ついに2つの果実を収穫することに成功しました。

収穫された果実のうち1つは斎藤義政氏に送られ、その後、大正天皇と貞明皇后が食されたと伝えられています。1934年には市場に出回り始め、竹五郎氏が穂木を人々に譲るなど普及に尽力した結果、船沢地区を中心に栽培が広がっていきました。

1960年代に入ると、スターキングデリシャスは全国的に栽培されるようになり、当時の主力品種であった国光などに代わって、日本のリンゴ市場を席巻しました。1961年には船沢農協から2万2千箱、翌年には3万箱が集荷され、高値で取引されたこともあり、船沢地区一帯は潤いに満ち溢れたといいます。

衰退

しかし、スターキングデリシャスは保存性に難がありました。より保存性に優れた「ふじ」などの後継品種が登場すると、急速に栽培面積が減少し、市場で見かける機会も少なくなっていきました。

現在では、スターキングデリシャスはかつてほどの勢いはありませんが、その独特の風味を愛する人々によって、細々と栽培が続けられています。もし市場で見かけることがあれば、ぜひその甘美な味わいを試してみてください。

スターキングデリシャスは、日本のリンゴ栽培の歴史に名を刻んだ、忘れられない品種の一つです。

もう一度検索