スチールハート

スティールハート：不運を乗り越え、今もなお進化を続けるハードロック・バンド

1980年代後半、アメリカン・ハードロック・シーンで頭角を現したスティールハート (Steelheart)。レッド・ツェッペリンやスコーピオンズといった巨匠たちの影響を色濃く受け継ぎつつ、独自のサウンドを確立した彼らの物語は、成功と苦難、そして不屈の精神の物語と言えるでしょう。

結成から絶頂期へ

バンドの起源は1981年、ミレンコ・マティアヴィッチを中心に結成された「レッド・アラート」というバンドに遡ります。当初はカヴァーバンドとして活動していた彼らですが、1990年、メジャーレーベルMCAレコードと契約。バンド名を「スティールハート」に変更し、セルフタイトルアルバム『STEELHEART』でデビューを果たします。

このデビューアルバムは全米ビルボードチャートでトップ40入りを果たし、日本でも初日に3万3千枚を売り上げるなど、センセーショナルな成功を収めます。同年には初来日公演も実現。そして、翌1991年にリリースされたバラード「She's Gone」は、インターナショナルチャートで1位を獲得する大ヒットとなり、スティールハートの名を世界に知らしめました。

勢いに乗って1992年にはセカンドアルバム『Tangled in REINS』を発表。しかし、この後、ツアー中に起きた悲劇が、バンドの運命を大きく変えることになります。ヴォーカルのマイク・マティアヴィッチが照明器具の落下事故に巻き込まれ、重傷を負ってしまったのです。長期の療養を余儀なくされたことで、バンドは中心人物を失い、1993年から活動を休止することになりました。

苦難の時代と再編

事故による活動休止期間中、マイク・マティアヴィッチは様々な困難に直面します。そして1996年、彼はスティールハートを再編し、サードアルバム『Wait』を発表しました。この作品は、マティアヴィッチが療養中に経験した苦悩や葛藤が反映された、哀愁漂う楽曲が中心となっています。当時流行していたグランジの影響も垣間見れるなど、これまでの作品とは異なる音楽性を示しており、事実上、マティアヴィッチのソロプロジェクトに近い作品ともいえるでしょう。オリジナルメンバーは脱退しており、彼一人だけで制作されたと言っても過言ではありません。

しかし、このアルバムリリース後もスティールハートは再び長期の活動を休止します。

再始動と現在

それから10年後の2006年、スティールハートは創設メンバーであるクリス・リゾーラの復帰と共に活動を再開します。自主レーベル「Steelheart Records」を設立し、EP『Just a Taste』やビデオ『Still Hard』などをリリース。2008年には12年ぶりのアルバム『Good 2B Alive』を発表、音楽性の変化も見られます。2017年には、27年ぶりとなる来日公演を開催し、同年秋には9年ぶりのアルバム『Through Worlds Of Stardust』をリリースするなど、精力的な活動を続けています。

スティールハートの音楽性

スティールハートの音楽を語る上で欠かせないのが、ミレンコ・マティアヴィッチの圧倒的な歌唱力です。4オクターブを超えるレンジと、表現力豊かなハイトーンボイスは、多くのファンを魅了してきました。1990年代の作品はオーソドックスなアメリカン・ハードロックが中心でしたが、「She's Gone」「I'll Never Let You Go」「All Your Love」といったバラードは特に高い人気を誇りました。しかし、『Good 2B Alive』以降は、音楽性が変化しつつあり、時代に合わせて進化を遂げていると言えるでしょう。

結びに

数々の困難を乗り越え、活動を続けるスティールハート。彼らの音楽は、時代を超えて人々の心を掴み続けるでしょう。これからも彼らの進化し続ける音楽に注目していきたいものです。

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