スティロニキア

スティロニキア (Stylonychia)

スティロニキア属（学名：Stylonychia）は、繊毛虫門に属する棘毛目に含まれるグループの一つです。この属に属する繊毛虫は、その独特の形態から比較的容易に識別できます。特に印象的なのは、体の後端から明瞭に突き出た3本の長い棘毛です。日本においては、特定の種に「トゲツメミズケムシ」という和名が与えられた例がありますが、属全体を指す一般的な和名は現在のところ確認されていません。

特徴

スティロニキアの細胞は細長い楕円形をしており、伸縮性はありません。また、体の背面側と腹面側が押しつぶされたような扁平な形をしています。サイズは比較的大きく、一般的に100マイクロメートルから300マイクロメートルの範囲です。体の前方、口の周囲には周口小膜域と呼ばれる繊毛が集まった構造があり、これは非常に発達していて、体長の約半分に達することもあります。体の側面には、前の方から後ろの方まで沿って棘毛の列（周縁棘毛列）が並んでいますが、これは体の最も後ろまでは達しません。腹面には、体の前の方に3本の前頭棘毛があり、さらに後方には横行棘毛と呼ばれる太い棘毛も見られます。そして何よりの特徴として、体の後端からは特に長く目立つ3本の尾棘毛が突き出ています。体の背面には、繊毛はあまり密に生えていません。

生息環境と生態

スティロニキアは、様々な淡水環境に生息しています。具体的には、湖沼、ため池、河川、そして水田など、日本の平地に広がる身近な水域で広く見られます。これらの環境では、水草やコケの表面、あるいは水底に沈んだ落ち葉の間などに多く生息しています。彼らは水中を活発に泳ぎ回るというよりは、これらの基質の上を腹面の棘毛を使って這うように移動することが多いです。特に、S. mytilisという種については、時折短い距離を跳躍するような独特の動きを見せることが報告されています。また、これらの繊毛虫は、環境条件が悪化した場合などに、身を守るための硬い殻を持つ胞嚢を形成することが多いとされています。

類似する種類との識別

スティロニキア属に似た形態を持つ繊毛虫はいくつか存在しますが、区別する上での最も重要なポイントは、体の後端から長い3本の尾棘毛がはっきりと突出しているかどうかです。

例えば、オキシトリカ属（Oxytricha）の繊毛虫も似ていますが、こちらは体の側面に並ぶ周縁棘毛列が体の後端まで連続してつながっています。また、オキシトリカの細胞はスティロニキアに比べて柔らかく、移動する際に体を左右にくねらせるような動きをすることがあります。

また、ユープロテス属（Euplotes）も全体的な形は似ていますが、口の周囲にある周口小膜域がさらに巨大で、体長の半分以上を占めるほどに発達しています。加えて、ユープロテスは体の縁に沿った周縁棘毛列を持たず、腹面に集中した太い棘毛の束（棘毛群）のみを持っている点で異なります。

日本で見られる種

日本国内からは、いくつかのスティロニキアの種が報告されています。代表的なものとして、前述のトゲツメミズケムシとして知られるStylonychia mytilusや、Stylonychia pustulataといった種が確認されています。

これらの情報は、日本の淡水動物に関する複数の専門図鑑などを参考にまとめられています。

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