スティーヴ・グロスマン

スティーヴ・グロスマン

スティーヴ・グロスマン（Steve Grossman）は、1951年1月18日にアメリカ合衆国ニューヨークで生まれ、2020年8月13日にその生涯を閉じたサックス奏者です。彼はフュージョンからハード・バップに至るまで、多岐にわたるジャズのスタイルを得意とし、そのキャリアを通じて数多くの伝説的なミュージシャンと共演しました。

来歴

グロスマンのキャリアにおいて特筆すべきは、まずジャズ界の巨匠マイルス・デイヴィスとの活動です。彼はフュージョンへと音楽性を移行させていた時期のマイルス・デイヴィス・バンドに、サックス奏者ウェイン・ショーターの後任として参加しました。この時期の演奏は、後の彼の音楽性に大きな影響を与えています。

マイルス・バンドを離れた後、グロスマンは1971年から1973年にかけて、名ドラマーであるエルヴィン・ジョーンズ率いるバンドに在籍しました。ここで彼はハード・バップのフィールドでその技量を磨き、ダイナミックな演奏を展開しました。

彼はリーダーとしての活動に加え、様々なミュージシャンとの共演も積極的に行いました。レコーディングでは、日本のトランペット奏者・日野皓正（1970年、1981年）やピアニスト・菊地雅章（1980年11月～1981年1月）との共演歴があります。他にも、チック・コリア（1970年）、ディジー・リース（1974年）、ルネ・ユルトルジェ（1990年）、ミシェル・ペトルチアーニ（1998年）、ジョニー・グリフィン（2000年）など、ジャンルや世代を超えた名プレイヤーたちとセッションを重ねました。

日本との関わりも深く、1975年には菊地雅章と日野皓正が共同で率いたフュージョンバンド「東風（こち）」の日本ツアーに参加。主要都市での公演に加え、ツアーの合間には新宿PIT INNのようなジャズクラブでも演奏し、日本のジャズファンにその存在を知らしめました。その後も、1986年1月、1987年1月、そして比較的近年である2014年10月にも来日し、東京のジャズクラブ「SOMEDAY」で1週間ずつの長期公演を行ったほか、全国ツアーも開催するなど、日本のジャズシーンと継続的に交流を持ち続けました。

ディスコグラフィ

スティーヴ・グロスマンはリーダー作として多数のアルバムをリリースしているほか、ストーン・アライアンス名義での活動や、数多くの著名なミュージシャンの作品に参加しています。以下にその一部を挙げます。

リーダー・アルバム

『サム・シェイプス・トゥ・カム』 - Some Shapes to Come (1974年)
『ムーン・ダンス』 - Jazz A Confronto 23 (1975年)
『テラ・ファーマ』 - Terra Firma (1977年)
『ボーン・アット・ザ・セイム・タイム』 - Born at the Same Time (1977年)
New Moon (1978年) ※with ジャン・フランソワ・ジェニー・クラーク
『パースペクティヴ』 - Perspective (1979年)
Way Out East Vol 1 (1984年)
Way Out East Vol 2 (1984年)
『ホールド・ザ・ライン』 - Hold the Line (1984年)
Love Is The Thing (1985年)
『スティーヴ・グロスマン Vol.1』 - Volume 1 (1986年)
『スティーヴ・グロスマン Vol.2』 - Volume 2 (1986年)
『スタンダード』 - Standards (1986年)
『カトーナ』 - Katonah (1987年)
Bouncing with Mr. A.T. (1989年)
Moon Train (1990年)
Reflections (1990年)
『ライヴ・アット・カフェ・プラガ』 - Live: Cafe Praga (1990年) ※旧邦題『ブルース・ウォーク』
My Second Prime (1990年)
『ライヴ・アット・ザ・サムデイ Volume.1』 - "Live" At The Someday Volume 1 (1990年) - 日本公演の記録
Do It (1991年)
In New York (1991年)
I'm Confessin' (1992年)
Time to Smile (1993年)
A Small Hotel (1993年)
『パリジャン・ウェルカム』 - Steve Grossman Quartet with Michel Petrucciani (1998年)
『OUR OLD FRAME』 - Our Old Frame (1999年) ※with 吉田正広
『スティーヴ・グロスマン&ジョニー・グリフィン・クィンテット』 - Johnny Griffin & Steve Grossman Quintet (2000年)
I'm Confessin' (2007年) ※1992年録音の再リリース
『ホームカミング』 - Homecoming (2011年)

ストーン・アライアンス名義

『ストーン・アライアンス』 - Stone Alliance (1976年)
『コン・アミーゴ』 - Con Amigos (1977年)
『ストーン・アライアンス〜マルシオ・モンタローヨス』 - Marcio Montarroyos & Stone Alliance (1977年) ※旧邦題『ミーツ・ブラジル』
『ライヴ・イン・ブレーメン』 - Live In Bremen (2005年) ※1977年録音
『ライヴ・イン・アムステルダム』 - Live In Amsterdam (2005年) ※1977年録音
『ライヴ・イン・ブエノス・アイレス』 - Live In Buenos Aires (2005年) ※1977年録音

主な参加アルバム

マイルス・デイヴィス: 『マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア』（1970年）、『ジャック・ジョンソン』（1970年）、『ライヴ・イヴル』（1971年）他
エルヴィン・ジョーンズ: 『メリー・ゴー・ラウンド』（1971年）、『ミスター・ジョーンズ』（1972年）、『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』（1972年）他
日野皓正: 『アローン・トゥゲザー』（1970年）、『ジャーニー・トゥ・エアー』（1970年）、『ダブルレインボー』（1981年）
中村照夫: 『ユニコーン』（1973年）、『ライジング・サン』（1976年）
菊地雅章: 『ウィッシズ』（東風名義、1976年）、『ススト』（1980年）、『ワン・ウェイ・トラヴェラー』（1980-81年）
チック・コリア: 『ザ・サン』（1970年）
* ジョージ大塚: 『マラカイボ・コーンポーン』（1978年）

スティーヴ・グロスマンはその力強く表現力豊かなサックス演奏で、ジャズ史における重要なフュージョン期とハード・バップ期の橋渡し役として、多くのリスナーに記憶されています。特にマイルス・デイヴィスやエルヴィン・ジョーンズといったレジェンドとの活動、そして日本での活発な演奏活動は、彼の国際的なキャリアのハイライトと言えるでしょう。

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