ステパノ・フランクリン

ステパノ・T・フランクリン：福音主義とプロセス神学の架け橋

ステパノ・T・フランクリン (1946年 - ) は、アメリカ合衆国を代表する神学者、哲学者の一人です。福音主義神学とプロセス神学という、一見対照的な二つの神学思想を深く理解し、その相互作用を探求してきた稀有な存在として知られています。

シカゴ出身のフランクリンは、ノースパーク大学で哲学の学士号を取得した後、シカゴ大学大学院に進学。哲学と神学を専攻し、ホワイトヘッドの有機体的宇宙観に基づいた、神学者ラングドン・ブラウン・ギルキーやデイヴィッド・トレイシー、哲学者ポール・リクアーの思想を統合した独創的な博士論文で哲学博士号を取得しました。

その後、ホイートン・カレッジやウィリアム・レインニ・ハーパー・カレッジといった名門大学で教鞭を執る傍ら、ロシアのマガダン聖ヤコブ聖書大学、聖契神学校、メリーランド大学、ノースパーク大学など、国内外多くの大学で客員教授を務めました。幅広い教育経験は、彼の国際的な視野と異文化理解を深める上で大きな役割を果たしました。

1991年、フランクリンは東京基督教大学に教授として着任。英語と哲学を教えるかたわら、1998年から2006年にかけて同大学第3代学長を務めました。学長在任中には、ACTS-ES（英語話者のためのアジア・キリスト者神学研究）プログラムを創設するなど、大学の発展に大きく貢献しました。ACTS-ESはリベラルアーツ、神学、異文化研究、東アジア研究を統合した4年制神学士課程で、アジアだけでなくアメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど世界各国から学生を集める国際的なプログラムへと成長しました。

彼の研究活動は多岐に渡り、プロセス神学における福音主義的視点を提示した論文や著書は高く評価されています。代表的な著書に『キリスト教世界観とリベラルアーツ―日本におけるキリスト教大学のアイデンティティ』があり、日本のキリスト教高等教育のあり方について考察しています。また、『Speaking from the Depths』では、ホワイトヘッドの聖書解釈における比喩法を詳細に分析しています。その他にも数多くの論文を発表し、プロセス神学、福音主義神学、そしてキリスト教リベラルアーツに関する独自の視点を開拓し続けています。

彼の論文は、「神と創造:ホワイトヘッドの文脈内での修正主義的提言」、「ヴァン・ティルの自立性」、「神学は死んだか？」など、神学の核心に触れるテーマを扱っており、常に議論を呼び起こしてきました。また、「キリスト者のイスラム教案内」のような、異宗教理解に関する研究も行っており、宗教間の対話を重視する姿勢を示しています。

フランクリンの業績は、福音主義とプロセス神学という異なる神学思想を統合しようとする、その独自の試みにあります。彼は単に両者を調和させるだけでなく、それぞれの強みを活かし、現代社会の課題に正面から向き合う新たな神学の可能性を示唆しています。彼の思想は、21世紀におけるキリスト教神学のあり方を探る上で、重要な指針となるでしょう。現在も東京基督教大学特任教授として、教育と研究活動を精力的に続けています。

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