ストップ!! ひばりくん!

ストップ!!ひばりくん!：ギャグ漫画の金字塔とその波乱の連載史

概要

『ストップ!!ひばりくん!』は、漫画家・江口寿史による代表作の一つ。1981年から1983年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載され、その後、長期にわたる中断を経て、27年ぶりに完結を迎えました。一見普通の美少女に見える大空ひばりが、実はヤクザの跡取り息子という設定と、彼を取り巻く個性的な登場人物たちの日常を描いたラブコメディです。

誕生秘話と連載開始

当時少年誌を席巻していたラブコメディへのアンチテーゼとして構想された本作。江口寿史は、ヒロインを「女装した少年」とすることで、従来のラブコメディとは異なるギャグ漫画を生み出そうとしました。可愛らしい見た目とヤクザの息子という意外性のある設定が、物語に独特の面白さを与えています。連載開始にあたっては、主人公の名前が「美空ひばり」から「大空ひばり」に変更されたという逸話も残っています。また、ファッション誌を参考にひばりの服装デザインが決定されたことも、作品の世界観を彩る重要な要素となっています。

連載打ち切りとその理由

連載当初は、オカマキャラを前面に出したギャグ漫画を想定していましたが、ひばりを可愛く描くほどギャグの面白さが増すことに気づき、極端に可愛らしい描写が増えていきました。しかし、この可愛らしさゆえに、ひばりというキャラクターが独立した存在となり、作中で予定通りの行動を取らせにくくなるという問題が発生。さらに、江口のこだわりの強い作画スタイルがアシスタントとの連携を難しくし、連載ペースが遅延。締切に追われることとなり、頻繁な休載や落稿を繰り返すことになります。最終的には、締切日に原稿を提出せず逃亡したことをきっかけに、連載打ち切りが決定しました。

27年越しの完結

未完のままとなった本作でしたが、読者からの強い要望を受け、2009年から加筆・修正を加えた『ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション』の刊行が開始されました。そして2010年、最終巻でラスト5ページが加筆され、27年越しの完結を迎えます。しかし、これは物語の完全な完結ではなく、未完だった部分のオチをつけた形でした。江口自身は、本編の続きを描くつもりはなく、仮に続編を描くとしても『ストップ!!ひばりくん!』というタイトルではないと考えているようです。

あらすじと主な登場人物

母の死をきっかけに、ヤクザの大空組の組長・大空いばりの家に身を寄せることになった高校生・坂本耕作。そこで出会った美少女・大空ひばりに一目惚れしますが、ひばりは実は大空組の長男で、学校では女装して生活していました。ひばりの秘密を知った耕作は、騒動に巻き込まれながら、次第にひばりを意識していくことになります。

主な登場人物は以下の通りです。

大空ひばり: 見た目は美少女だが、実は大空組の跡取り息子
坂本耕作: 母を亡くした少年で、ひばりの秘密を知る
大空いばり: 大空組の組長で、ひばりの父親
大空つぐみ、つばめ、すずめ: ひばりの姉妹
* 椎名まこと、可愛理絵、梶みつを: 耕作やひばりのクラスメイトや周囲の人物たち

その他、個性豊かな登場人物たちが物語を盛り上げます。

テレビアニメ化

1983年には、テレビアニメがフジテレビ系で放送されました。全35話。原作のエピソードを使い切った後は、他の江口作品からの転用やオリジナルストーリーが制作されたとのことです。

反響と影響

『ストップ!!ひばりくん!』は、その独特な設定とキャラクター、そして斬新なギャグセンスで、多くの読者から支持を得ました。特に、ひばりの女装という設定は、当時の社会におけるジェンダーへの認識に影響を与えたと言われています。また、後年の「男の娘」ブームの先駆けとなった作品としても高く評価されています。その影響は、他の漫画作品や小説などにまで及んでいるようです。

書誌情報

本作は、ジャンプ・コミックス版、完全版、文庫版、コンビニコミック版、コンプリート・エディションなど、複数の版で刊行されています。各版で収録内容や加筆修正に違いがあるため、コレクターの間では話題となっています。

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