スパイラルフォール

1994年にナムコ（後のバンダイナムコエンターテインメント）が世に送り出したメダルゲームです。中心部に配された独自の抽選機構を複数のプレイヤーが囲む大型筐体で、その革新的なシステムは多くのプレイヤーを魅了しました。

ゲームの仕組み

本機は、抽選機構を取り囲むように8席のプレイヤーステージ（サテライト）が配置されており、各プレイヤーはここでゲームに参加します。

1ゲームごとに、合計16個のボールが筐体上部かららせん状のレールを通って降下してきます。ボールは主に赤、黄、青の3色ですが、「ANY COLOR」というベット対象も存在します。ゲーム開始前には、今回投入される各色のボールの個数が表示されますが、実際にボールが落ちてくる順番はランダムです。

プレイヤーは、RED、YELLOW、BLUE、そしてANY COLORの4種類のベットが可能です。配当は、プレイヤーのポケットに入ったボールの色と個数、そしてそのゲームで設定された色ごとの割り当て個数によって決まります。割り当て個数が少ない色ほど、同じ個数を入賞させた場合の配当倍率が高く設定されており、特に割り当てられたボール全てを獲得した場合には、非常に高い配当が得られます。なお、ANY COLORにベットしていた場合、入賞したボールが1個だけでは配当はつきません。

各プレイヤーのサテライトには3列のポケットがあり、1列につき最大2個までボールが入ります。隣のプレイヤーとの間に位置するポケットは「アウト」となり、ボールが入っても結果に影響しません。また、ボールの排出パターンには特定のBGMが関連付けられており、BGMの出だしからゴールドボールの出現を予感するなど、ゲーム展開をある程度予測できる要素もありました。

ゴールドボール

16個のボール全てが降下し終えた後、ごく稀にゴールドボールが追加されることがあります。ゴールドボールが出現する際は、BGMやボールの排出パターンが特定のパターンに固定されるため、熟練したプレイヤーはゲーム開始時の特定のBGMでゴールドボールの出現を察知することができました。

ゴールドボールを獲得したプレイヤーには、絶大な恩恵があります。そのゲームにおける全ベットに対し、入賞したボールの数が「1球分増加」として計算され、さらに計算された配当が「2倍」になるという効果が発動します。ゴールドボール獲得時には、マシンから特別な音声アナウンスも流れます。

特定の条件下では、ゴールドボール獲得による配当が、通常の配当表の規定を超える現象も存在しました。特に、割り当てられた個数が少ない色（5個以下）を全て獲得した状態でゴールドボールを得た場合、内部的に入賞数が加算されることで、本来設定されていない上位の配当が出現することがありました（例：3個全獲得＋ゴールドボールで200倍）。これは、一種の配当上限突破とも認識されていました。

また、稀にマシンのボール色認識エラー（主に黄色を赤と誤認識するケース）によって、本来あり得ない個数がカウントされ、高配当が付与される不具合も報告されていました。例えば、3個割り当ての色で、認識エラーにより4個以上の入賞と判断された場合に高倍率が得られ、これはゴールドボール効果と組み合わせることも可能でした。

フィーチャー機能

ベットを行ったプレイヤーに対して、ゲーム開始時にランダムで「フィーチャー」が付与されることがあります。フィーチャーは、特定の条件を満たすことで、あらかじめ表示された固定枚数（最低5枚、最高1000枚）のメダルを獲得できるボーナスです。この枚数は、ゴールドボール獲得時でも2倍にはなりません。

代表的なフィーチャーの条件は以下の通りです。

EMPTY: 1球もボールが入らなかった場合。
FULL: 6球全て入った場合。
SIDEWAYS: 3列全てに1個ずつボールが入った場合。
LEFT / CENTER / RIGHT: 指定された1列のみに2個ボールが入った場合。他の列に1個でも入ると無効となります。

ゲーム中にフィーチャーの達成条件が不可能になった場合、そのフィーチャーの表示は「BREAK」とともに暗転します。逆に、条件を満たしている状態では、表示が明滅してプレイヤーに達成が近いことを知らせます。

その他

「スパイラルフォール」には、他にも様々な特徴やエピソードがあります。

ゴールドボール出現率設定: 店舗側の設定により、ゴールドボールの出現率を「100%」にすることも可能で、イベントとして「ゴールドボールが出続けるチャンスタイム」などが実施されることもありました。
ボール入賞判定: ポケットへのボール入賞は、筐体上部の4台のCCDカメラの映像を解析して行われていました。テストモードではカメラ画像を確認する機能もありました。
トラブル時の対応: ゲーム中にマシントラブルが発生した場合の処理がシステムに組み込まれていました。ゲーム成立後に中断した場合などは、復旧時に結果が表示され配当処理が行われる一方、全球確定前に中断した場合はゲームが無効となり、ベットメダルはプレイヤーに返還される仕組みでした。特にボール詰まりによるゲーム無効化が多く見られました。
起動時の隠しキャラクター: マシン起動時の通信待ち画面には、手足が生えたパックマンが登場し、メダル投入でユニークなアクションを見せるという隠し要素がありました。
* サウンドトラック: BGMのサウンドトラックCDの発売が企画されていましたが、実現には至りませんでした。

「スパイラルフォール」は、らせん状のボール降下というユニークな演出と、戦略性のあるベット、一発逆転の可能性を秘めたゴールドボールなど、多様な要素が融合した、1990年代を代表するメダルゲームの一つと言えるでしょう。その個性的なシステムは、今なお一部のゲーム愛好家の間で記憶されています。

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