スパルティナ・アルテルニフロラ

スパルティナ・アルテルニフロラとは

スパルティナ・アルテルニフロラ（Spartina alterniflora）は、イネ科に属する植物で、北米東部を原産とします。その外見は、日本でも水辺に見られるアシ（ヨシ）によく似ており、高さは2メートルに達することもあります。汽水域、特に干潟や河口などの塩分濃度の高い場所に繁茂し、和名として「ヒガタアシ」と呼ばれることもあります。

生態

スパルティナ属の植物は、塩分濃度の高い環境に適応しており、干潟や塩沼といった場所に生育します。特筆すべきはその繁殖力の強さです。このため、米国西部（ワシントン州）、ニュージーランド、ブラジルなどでは、干潟の草地化を引き起こし、生態系に深刻な被害をもたらしています。干潟は、魚介類や水鳥にとって重要な生息地であり、生物多様性の観点から非常に貴重な存在です。

ヒガタアシは、円形の群落を形成する傾向があり、種子だけでなく、植物の断片からも容易に増殖します。そのため、近くに別の草むらを形成することも珍しくありません。一度根付くと、地盤の柔らかい干潟や湿地では、重機による根絶が難しく、生態系への脅威とみなされています。

日本における生態

日本国内では、2011年8月に愛知県豊橋市の梅田川河口付近で、約1キロメートルにわたってスパルティナ・アルテルニフロラの繁殖が確認されました。これは、日本で初めてのスパルティナ属の生息確認例となります。発見のきっかけは、同年3月に「愛知県移入種検討会」の担当委員が調査した「不明植物」の標本でした。この標本は、2008年に梅田川で採取されたもので、愛知教育大学で保管されていました。同委員によると、この外来生物の侵入時期は2005年前後と推測されています。

侵入経路は明確ではありませんが、繁殖地が貿易港である三河港に近いことから、貨物船のバラスト水が種子を運んできた可能性が指摘されています。環境省と愛知県は、本種が特定外来生物に指定されている「スパルティナ・アングリカ」に近縁であることから、生態系への影響を強く警戒し、開花時期である10月に合同で生態調査を実施しました。

その後、熊本県の3河川（白川、坪井川、大野川）でも生育が確認され、日本国内での繁殖拡大の懸念が高まりました。環境省は、2014年6月に本種を特定外来生物に指定し、根絶対策を強化する方針を決定しました。同年6月11日には正式に指定され、日本スパルティナ防除ネットワーク（JNPS）が発足し、対策に取り組んでいます。

外部リンク

Germplasm Resources Information Network: Spartina alterniflora
Noxious Weed IVM Guide- Smooth Cordgrass (Spartina)
Invasive Plant Council – Spartina alterniflora
日本スパルティナ防除ネットワーク（JPNS）

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