スベンスマルク効果

スベンスマルク効果：宇宙線が気候変動に及ぼす影響とは？

スベンスマルク効果とは、宇宙から飛来する銀河宇宙線が地球の雲の形成に影響を与え、ひいては地球の気候変動に関与しているという仮説です。この仮説は、デンマーク宇宙研究所のヘンリク・スベンスマルク博士らによって提唱されました。

仮説の内容

この仮説の中心となるのは、銀河宇宙線が地球の大気中のイオン化を促進し、その結果として雲の凝結核（雲粒が成長するための核となる微粒子）の生成が促進されるという考え方です。雲の量は地球のアルベド（反射率）に影響するため、雲の量の変化は地球の気温に影響を与えると考えられています。

具体的には、太陽活動が活発な時期には太陽磁場が強くなり、地球に到達する宇宙線の量が減少します。逆に、太陽活動が不活発な時期には宇宙線の量が増加します。スベンスマルクらは、宇宙線の量の変動が雲の量、ひいては地球の気温に影響を与えている可能性を指摘しました。

スベンスマルク効果に関する研究

スベンスマルク効果を実証するための研究は、世界中で行われています。スイスの欧州原子核研究機構（CERN）では、CLOUD実験と呼ばれる大規模な実験が行われ、宇宙線が雲の形成に影響を与える可能性を示唆する結果が得られています。しかし、これらの結果は、地球温暖化全体に占める宇宙線の影響が小さいことを示唆する研究結果も存在し、スベンスマルク効果が地球温暖化の主要因であると結論付けるには至っていません。

神戸大学の研究

2019年、神戸大学は、78万年前の地磁気逆転期に、銀河宇宙線の増加に伴い雲の量が増加し、冬の季節風が強まったという証拠を発見しました。これは、銀河宇宙線が地球の気候変動に影響を与える可能性を示唆する重要な発見です。この研究では、中国黄土高原の堆積物や大阪湾の堆積物コアを分析することにより、地磁気逆転期における気候変動を詳細に調べ、宇宙線増加と気候変動の関連性を明らかにしました。具体的には、地磁気逆転期には銀河宇宙線が大幅に増加し、その結果として雲の量が増加、いわゆる「日傘効果」が強まり、冬の季節風が強化されたと結論付けています。

温暖化への影響

スベンスマルク効果が地球温暖化にどの程度影響を与えているかについては、現在も議論が続いています。気候変動に関する政府間パネル（IPCC）は、近年の地球温暖化は主に人為的な要因によるものであると結論づけており、スベンスマルク効果の影響は限定的であると評価しています。しかし、IPCCの報告書でも、宇宙線が雲の形成に何らかの影響を与えている可能性は否定されていません。

今後の展望

スベンスマルク効果に関する研究は、現在も進行中です。特に、宇宙線が雲の形成に与える影響の大きさを正確に評価すること、および、その影響が地球温暖化にどの程度寄与しているかを明らかにすることが今後の課題です。これらの研究によって、地球温暖化のメカニズムをより深く理解し、効果的な対策を講じるための重要な知見が得られると期待されます。CERNのCLOUD実験も継続されており、特に海洋におけるヨウ素の役割など新たな知見も得られています。これらの研究によって、宇宙線と気候変動の関連性に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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