スペインカンゾウ

スペインカンゾウ：甘草として知られるマメ科植物

スペインカンゾウ（学名: Glycyrrhiza glabra）は、マメ科カンゾウ属に属する植物です。一般的に甘草と呼ばれ親しまれていますが、東アジアで広く知られるウラルカンゾウとは異なる種類です。別名、セイホクカンゾウやヨーロッパカンゾウとも呼ばれ、英語ではリコリス（liquorice, licorice）として知られています。ただし、園芸の世界ではリコリスといえばヒガンバナ属の植物を指すことがあるため、注意が必要です。

スペインカンゾウとウラルカンゾウの違い

スペインカンゾウとウラルカンゾウはどちらも羽状複葉ですが、小葉の形に違いがあります。スペインカンゾウの小葉は細長い小判型（長卵形）であるのに対し、ウラルカンゾウの小葉は丸みを帯びており、品種によってはスペード型に見えるものもあります。また、生育条件が同じであれば、スペインカンゾウの方がウラルカンゾウよりも背が高くなる傾向があります。これらの形態的な違いに加え、両種は遺伝的にも区別されます。日本薬局方では、生薬「甘草」の基原植物として、スペインカンゾウもウラルカンゾウも認めています。

広範囲に広がる生育地

スペインカンゾウは、南ヨーロッパ、小アジア、中央アジア、ロシア南部、新疆ウイグル自治区など、ユーラシア大陸の広い地域に分布しています。生育環境は様々ですが、日当たりの良い場所を好みます。

貴重な成分と多様な用途

スペインカンゾウの根には、グリチルリチン酸という甘味成分が5～8％含まれています。このグリチルリチン酸は、甘味料としてだけでなく、様々な薬効を持つことが知られています。また、根の周皮には、グラブリジンなどのイソフラボノイドやフラボノイドが豊富に含まれ、強い抗酸化作用やチロシナーゼ阻害作用を示します。これらの成分は、美肌効果や抗炎症作用に寄与すると考えられています。

これらの特性から、スペインカンゾウは幅広い用途に使われています。甘味料、スパイス、ハーブとして食品に利用される他、薬用植物や化粧品添加物としても活用されています。特に欧米では、リコリス菓子やルートビアといった食品の甘味料として広く用いられています。一方、日本では、グリチルリチン酸やグラブリジンを抽出するための原料として主に利用されており、生薬「甘草」の原料としても使用されますが、ウラルカンゾウの方が圧倒的に多く使用されています。

まとめ

スペインカンゾウは、その独特の形状と豊富な成分から、甘味料や薬用、化粧品など多様な分野で活用されている重要な植物です。ウラルカンゾウとは異なる特徴を持つ一方、共に生薬「甘草」の基原植物として重要な役割を果たしています。今後、その有用性に関する研究がさらに進展し、新たな用途が発見される可能性も秘めています。

もう一度検索