スペイン1812年憲法

スペイン1812年憲法の概要

スペイン1812年憲法、通称カディス憲法は、スペイン独立戦争の最中に成立した重要な法典です。この憲法は、カディスに集まった国民議会であるカディス・コルテスによって公布され、スペインの近代立憲主義の礎を築きました。憲法は、サン・ホセの日に採択されたことから、スペイン人に「ラ・ペパ」と呼ばれ、一般に親しまれています。

背景

憲法が策定された1812年当時、スペインはフランス帝国に対抗する独立戦争の最中でした。この戦争は、1808年5月2日に始まり、ナポレオン軍に対抗するゲリラ戦や英国軍との連携が展開されました。カディスに避難していたコルテスは、スペイン本土が戦場となる中で新たな政治的枠組みを作る必要性を認識し、議会の開会に至りました。

審議と憲法の制定

1810年9月24日、カディス・コルテスは新たに開会しました。この議会には、スペイン本土とその植民地から選出された民選の代議員が集まります。しかし、全180名の議員の内、正式な出席者は104名に限られ、その中には補充議員も含まれていました。中でもアメリカの植民地からは27名が選ばれて参加しました。

議会では、主権在民や国王フェルナンド7世の正統性、代議士の不可侵性といった基本的な原則が重要視され、議論を重ねた結果、1812年3月12日にスペイン初の成文化された憲法が正式に採択されました。この憲法は、従来の絶対王政から脱却し、民意に基づく政治を志向するものでした。

この憲法の成立は、植民地住民にとっても初めての国政参加を果たす場となり、スペイン本土と植民地の関係改善のきっかけと見なされました。しかし、その後のフェルナンド7世の反動的な政策により、この状況は一転します。

憲法の破棄と復活

1814年、連合軍の手によって復位したフェルナンド7世は、一時的に憲法を支持する意向を見せましたが、カトリック教会の影響を受け直ちに憲法を拒否しました。彼は、憲法が自己の同意なしに制定されたものであることを理由に、再び絶対主義へと回帰したのです。この動きは、保守派の立場の強化を意味し、自由主義的であったカディス憲法は暗転を余儀なくされました。

しかし、1820年に自由主義の再興運動が起こり、リエゴ・イ・ヌニェスの反乱を契機に憲法は一時的に復活します。自由主義者たちは1812年憲法を掲げ、立憲君主制の実現を目指しましたが、1823年のトロカデロの戦いを経て再び反動的な圧政が続きました。

歴史的影響

1812年憲法そのものは、将来的に1837年憲法の制定に結びつく重要な土台となりました。スペインに続き、ポルトガルやイタリア、さらにはラテンアメリカ諸国における国民主義およびリベラリズムに多大な影響を与えました。1812年以降、スペインでは1978年憲法までに7つの憲法が制定されることとなります。

このように、スペイン1812年憲法は、国家の指導原則として主権在民を掲げ、自由主義や立憲主義の大きな進展を示した歴史的な文書として、今もなお語り継がれています。

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