スペンサー (衣服)

スペンサー (Spencer)

スペンサーは、1790年代に登場した、燕尾服の尾を切り取った独特なデザインの外套です。その起源は、元々ウールで作られており、腰丈の短い形状をしています。これは特に男性用のダブル（両前）合わせのジャケットとして位置づけられました。通常、長い燕尾服の上に重ね着されるアイテムであり、特にエレガントなスタイルとして親しまれました。

この名称は、スペンサー伯爵ジョージ・スペンサーに由来しています。彼は軍関係の勲章をジャケットにあしらっており、それがスペンサーの最も正統な、お洒落な着こなしとされました。興味深いことに、スペンサーの誕生にはいくつかの伝説があります。一説によれば、スペンサー伯爵が燕尾服を着用し、そのまま暖炉の近くに立っていた際に、尾の部分を焦がしてしまったために、その部分を切り落としたことにより新しいスタイルが生まれたというものです。

もう一つの説では、狩猟中に尾が野イバラに引っかかって困った伯爵が、あまりの煩わしさに尾の部分を切断してしまった、というエピソードが語られています。このように、スペンサーは偶然から貴族の間で流行することとなりました。

1790年から1820年にかけて、イギリスの摂政時代において、スペンサーは大西洋両岸での女性ファッションにおいて特に人気を博しました。この時期のスペンサーは、今日のカーディガンに似た機能を果たしており、着衣の腰の線の少し上までの丈の短いジャケットとして定着。これにより、他の衣服とは違うスタイルとして認識されるようになりました。

スペンサーという名称は19世紀まで使われましたが、時が経つにつれて、その範囲は広がり、短いジャケットやコートを指す言葉として使用されるようになりました。特にオーストラリアでは、「スペンサー」という名称が保温性の下着を示すこともあるため、地域によって意味が異なることがあります。

これらの要素が絡み合い、スペンサーはファッションの一環としてだけでなく、文化や社会的背景を映し出す興味深いアイテムになりました。燕尾服や他のフォーマルな装飾とも相性が良く、時代を超えて様々なスタイルに影響を与えてきました。

関連項目

• - 燕尾服
• - 軍服
• - 被服
• - タキシード
• - 礼服
• - ボウタイ

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