スペース (ローマ神話)

スペース — ローマ神話の希望の女神

スペースは、ローマ神話に登場する「希望」を擬人化した女神で、その名はラテン語で「希望」を意味します。彼女は人々に希望を与え、その存在は古代ローマの宗教観に深く根付いていました。

歴史的背景と神殿

ローマ市内には、スペースを奉るためのいくつかの神殿が存在しましたが、その中でも特に注目すべきは、紀元前258年に建立されたフォルム・ホリトーリウムの神殿です。これは第一次ポエニー戦争の最中、執政官のアウルス・アティーリウス・カーラーティーヌスによって祈願され、奉献されました。この神殿は紀元前213年および西暦7年に二度焼失しましたが、その都度復元されています。

紀元前110年には、南イタリアのカプアに、スペースを含む三神の神殿が建設され、そこではフィデース（信頼）やフォルトゥーナ（運命）と並んで希望を象徴する重要な存在として崇拝されました。スペースの祭りは8月1日に行われ、これには多くの人々が参加したとされています。

美術における表現

美術作品において、スペースは通常長衣をまとい、優雅に歩く乙女として描かれ、右手には花を持つ姿で表現されます。この表現は、希望の瑞々しさや美しさを象徴するものとされています。さらに彼女は、ギリシャ神話に登場するパンドーラーの甕の底に残されたエルピスとも関連付けられることがあります。このように、スペースは希望の象徴として深い記憶に残る存在です。

キリスト教への影響

スペースは後にキリスト教の教義にも取り入れられ、七元徳の一つとして位置付けられました。これは彼女が持つ「希望」が、キリスト教における価値観とも響き合っていることを示しています。特にプルーデンティウスの詩において、スペースの存在は美しく描写され、彼女の役割がどれほど重要であったかが窺えます。

まとめ

スペースの神話や信仰は、古代ローマの人々が希望という概念をどのように捉えていたかを教えてくれます。彼女の象徴的な姿とその信仰は、後の文化にも影響を与え、希望の女神として今なお語り継がれています。古代の美術作品や神殿の痕跡を辿ることで、希望に対する人々の思いを感じることができます。希望は決して消えることのない人間の根源的な願いであり、それを体現する存在がスペースであることを忘れてはなりません。

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