スポック博士の育児書

スポック博士の育児書とは

『スポック博士の育児書』（原題：The Common Sense Book of Baby and Child Care）は、アメリカの小児科医ベンジャミン・スポックによって1946年に出版された育児書です。この書籍は、世界中で42か国語に翻訳され、5000万部以上を売り上げるという驚異的な記録を達成しました。1946年以降では聖書に次ぐ販売部数を誇るとも言われています。原題が示すように「赤ちゃんと子供の育児の常識についての本」として、当時の育児に対する考え方に大きな変革をもたらしました。

詳細

出版当初から大きな反響を呼び、わずか6年で600万部を販売、様々な言語に翻訳され、世界中で広く読まれるようになりました。日本では、暮しの手帖社から第6版まで翻訳版が出版されています。この育児書は「育児の聖書」とも称され、第二次世界大戦後のアメリカにおける民主的な生活スタイルと相まって、広く普及しました。しかし、その内容は時代とともに見直され、一部の示唆に対しては異論も唱えられました。

時代や思想の変化、科学的根拠の進歩に合わせて、内容は何度も改訂されてきました。1992年、当時88歳だったスポックは、生きている限り本の改訂を続けると宣言しました。彼はその言葉通り、1957年に第2版、1968年に第3版、1976年に第4版、1985年に第5版、1992年に第6版を出版し、亡くなった1998年には第7版を刊行しました。さらに、妻のメアリ・モーガンは、スポックが亡くなる前に本の改訂を可能にしたと述べており、実際に2004年には第8版が出版されています。

この育児書には共著者もいましたが、1997年にはスポックの代理人が、第7版にはスポック自身が深く関わっていたと述べています。

内容の一部

『スポック博士の育児書』は、育児に関する幅広いテーマを扱っています。以下にその一部を紹介します。

両親の役割: 親としてどのように子供と向き合うべきか。
医者のかかり方: 適切な医療機関の選び方、医師とのコミュニケーション。
人工栄養とビタミンと水: 赤ちゃんに必要な栄養の与え方。
食事と食事時間の変化: 子供の成長に合わせた食事内容の調整。
毎日の赤ちゃんの世話: 日常生活での基本的なケア。
添い寝: 子供の自立を妨げる可能性と対策。
予防接種: 子供を感染症から守るための重要性。
乳児について: 乳児期の特有の注意点。
排泄のしつけ: トイレトレーニングの方法。

この本は、初版から「あなたが考える以上にあなたは知っています」というメッセージを冒頭に掲げており、親の直感を信じることの重要性を強調しています。また、第4版では、フェミニストからの批判を受けて、性差別的な表現を避けるように書き改められました。第7版では、核戦争やコンピューターゲームといった現代的なテーマが取り上げられ、2歳以降は乳製品を必要とせず、植物性の食品のみを食べるという、スポック自身の健康観に基づいた内容が加えられました。

まとめ

『スポック博士の育児書』は、単なる育児書としてだけではなく、時代の変化や社会的な動向を反映した記録としても重要な意味を持っています。その内容は常に議論の対象となり、賛否両論がありましたが、その影響力は計り知れません。子育てに対する考え方を根本的に変え、多くの親たちに自信と安心感を与えてきた書籍です。

参考文献

ベンジャミン・スポック、マイケル・ローゼンバーグ 『スポック博士の育児書』暮しの手帖社、1997年10月。ISBN 978-4766000603。
Benjamin Spock, Steven Parker, Dr. Spock's Baby and Child Care, 7 edition, 1998 ISBN 978-0671537623
Benjamin Spock, Robert Needleman, Dr. Spock's Baby and Child Care, 8 edition, 2004 ISBN 978-0743476683

外部リンク

* The Dr. Spock Company （英語）

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