スマート (自動車)

スマートの歴史：スウォッチとの協業から電気自動車へ

スマートは、1994年、スイスの時計メーカーであるスウォッチとダイムラー・ベンツ（当時）の合弁事業として誕生しました。当初は小型車を得意とするフォルクスワーゲンとの提携を目指していましたが、実現せず、両社によるマイクロカー生産という、異色の組み合わせでのスタートとなりました。

設立と初期の苦戦: フランスに工場を建設し、1998年には2人乗りマイクロカー「シティクーペ」（後の「フォーツークーペ」）を発売。しかし、発売直後に横転問題が発覚し、設計変更に多額の費用が投じられました。この影響でダイムラー・ベンツの出資比率が増加し、スマート事業は12年間赤字が続きました。スウォッチは最終的に事業から撤退し、ダイムラー・ベンツの完全子会社となりました。累計損失は36億ドルに達するなど、事業存続が危ぶまれる事態に陥りました。

転換期と市場のニーズ: しかし、2007年にフォーツーがモデルチェンジし、第2世代へと移行。世界的なガソリン価格高騰と環境意識の高まりにより、低燃費小型車への需要が高まっていた時代背景が追い風となり、スマート事業はついに黒字転換を果たしました。2008年には、アメリカ市場への進出も実現しました。米国向けモデルは、安全基準を満たすために全長を延長した設計となっています。

ルノーとの協業とモデル展開: 2014年には、ルノーとの共同開発による第3世代モデルが登場。ルノー・トゥインゴと車台やエンジンを共通化し、車幅が拡大。2人乗りのフォーツークーペ、フォーツーカブリオに加え、4人乗りモデルのフォーフォーもラインナップされました。日本市場には2015年から順次導入され、イメージキャラクターとして相葉雅紀を起用するなど、積極的に販売促進が行われました。

中国企業との合弁と未来: 2019年、ダイムラーは中国の浙江吉利控股集団と新たな合弁会社「Smart Automobile Co., Ltd.」を設立。電気自動車の生産を中国で行い、世界市場へ輸出する体制を整えました。これは、スマートブランドの新たな転換点であり、今後の動向が注目されます。

ブランド名の由来: スマートのブランド名は、スウォッチの「S」、メルセデス・ベンツの「M」、そして「art（芸術）」を組み合わせたもの。「smart」という単語が持つ「洗練された」「賢い」といった意味合いも反映されています。

日本市場における展開: 日本市場では、当初は並行輸入業者による販売が行われていましたが、後にダイムラー・クライスラー日本（現・メルセデス・ベンツ日本）が正規販売を開始。全国のメルセデス・ベンツ正規ディーラーで取り扱われるようになりました。フォーツーカブリオは、阪神甲子園球場の公式リリーフカーとしても採用されています。

モデル変遷: スマートは、これまでに様々なモデルを発売してきました。初期のシティクーペ、フォーツー、フォーフォーに加え、ロードスターやクロスブレードといった個性的なモデルも存在します。電気自動車モデルも積極的に展開されており、環境への配慮も重視されています。

スマートの未来: 中国企業との合弁により、スマートは電気自動車市場での競争力を強化しようとしています。今後、新たな技術やモデルの投入、市場開拓戦略によって、ブランドの成長が期待されます。 これまでの苦境を乗り越えてきたスマートが、どのような未来を築いていくのか、注目に値します。

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