スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち

スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち

2012年に製作された映画『スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち』（原題：Small Apartments）は、独特のユーモアと冷徹な視点が融合したブラック・コメディ作品です。

本作は、作家クリス・ミルズによる同名小説を基にしており、ミルズ自身が脚本も手掛けています。メガホンを取ったのは、マドンナをはじめとする著名アーティストのミュージックビデオや、スリラー映画『ホースメン』などで知られるスウェーデン出身の監督ジョナス・アカーランド。彼のスタイリッシュかつ時には残酷な映像感覚が、物語に独自のトーンを与えています。

舞台となるのは、カリフォルニア州ロサンゼルスの郊外にある、低所得者層が多く暮らす古びた集合住宅。ここに集う個性豊かな住民たちの織りなす人間模様が、シニカルでドライな筆致で描かれています。主演は、イギリス出身のコメディアン、マット・ルーカス。彼は、社会から隔絶され、どこか孤独を抱えた主人公を繊細に演じています。脇を固めるキャスト陣も非常に豪華で、ジェームズ・カーンやビリー・クリスタル、ピーター・ストーメアといったベテラン勢に加え、ジェームズ・マースデン、ジュノー・テンプル、ジョニー・ノックスビル、アマンダ・プラマーなど、インデペンデント映画としては破格の顔ぶれが集結しています。さらに、アクションスターとして知られるドルフ・ラングレンが、一見して怪しげなベストセラー作家役で登場し、物語にアクセントを加えています。

あらすじ

物語の主人公は、ロサンゼルスの郊外にあるこのアパートに住むフランクリン・フランクリン。彼は友人もなく、身寄りも兄のバーナードだけという孤独な日々を送っています。しかし、その兄も、たまたま立ち寄った書店でベストセラー作家メノックス博士の講演を聞いたことから精神に変調をきたし、精神診療所に入院してしまうという有様です。

愛犬を唯一の話し相手に、向かいの部屋に住む娘シモーンの姿を双眼鏡で眺めながら、憧れの国「スイス」を夢見てアルペンホルンを吹くのが日課。しかし、その音色は隣人たちの神経を逆なでするばかり。神経質なオールスパイスからは常に苦情を浴びせられ、もう一人の隣人であるヤク中のトミーとは、極力関わらないように暮らしています。そんなフランクリンには、奇妙な習慣がありました。それは、自宅ではほぼ裸同然のブリーフ姿で過ごすこと。そして、一歩でも外に出る際には、決してカツラを忘れないことです。

ある日、家賃を滞納していたフランクリンのもとに、大家のオリヴェッティが催促にやってきます。家賃が払えないと説明するフランクリンに対し、嫌味ったらしく詰め寄る大家でしたが、ほんの些細なきっかけでバランスを崩し、フランクリンの目の前で転倒。そのまま息絶えてしまいます。

予期せぬ事態にパニックを起こしたフランクリンは、目の前の死体を前に、必死に事態を収拾する方法を考え始めます。そして、たどり着いた結論は「自殺に見せかける」ことでした。夜更け、近隣が寝静まるのを待って死体を運び出し、大家の自宅ガレージで偽装工作に取り掛かります。

しかし、素人のフランクリンによるずさんな偽装がうまくいくはずもなく、事態はすぐに明るみに出ます。通報を受けたベテラン刑事のウォルナットらが捜査を開始。「自殺」ではなく「事件」として新聞の見出しを飾るのを目にしたフランクリンは、自身の計画が失敗したことを悟り、一層追い詰められていくのでした。果たして、孤独なフランクリンは、この絶体絶命の危機を乗り越えることができるのでしょうか。それとも、さらに深みへと嵌っていくのでしょうか。

日本では劇場公開されず、2013年にDVDがリリースされました。一癖も二癖もあるキャラクターたちが繰り広げる、予測不能な展開が見どころの一本です。

キャスト・スタッフ

主な出演者：
フランクリン・フランクリン：マット・ルーカス
オールスパイス氏：ジェームズ・カーン
バーナード・フランクリン：ジェームズ・マースデン
トミー・ボールズ：ジョニー・ノックスビル
バート・ウォルナット：ビリー・クリスタル
シモーン：ジュノー・テンプル
オリヴェッティ：ピーター・ストーメア
メノックス博士：ドルフ・ラングレン
フランシーン：サフロン・バロウズ
トミーの母：アマンダ・プラマー
* トミーの恋人：レベル・ウィルソン

監督：ジョナス・アカーランド
脚本：クリス・ミルズ
原作：クリス・ミルズ

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