スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ

スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ：ベラルーシの民主化を求める闘士

スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ（Sviatlana Tsikhanouskaya, 1982年9月11日生まれ）は、ベラルーシの政治活動家であり、2020年の大統領選挙に無所属で出馬したことで国際的な注目を集めました。当初は教師として、そして人気YouTuberである夫、シャルヘイ・ツィハノウスキーの支援者として活動していましたが、夫の逮捕をきっかけに、自らが大統領選に立ち上がるという決断を下しました。

大統領選への出馬

2020年5月、夫のシャルヘイ・ツィハノウスキーが逮捕されたことを受け、スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤは、夫の代わりに大統領選への出馬を決意しました。彼女は、有力な野党政治家であるヴァレルィ・ツァプカラやヴィクタル・ババルィカからの支持を得て、選挙戦を戦いました。ツァプカラの妻ヴェロニカ・ツァプカラ、ババルィカの選挙対策本部長マリア・コレスニコワと共に写った写真は、彼女の選挙運動の象徴となりました。

しかし、選挙戦は困難を極めました。ツィハノウスカヤ自身も脅迫を受け、子供たちの安全のために海外へ避難させる必要がありました。当時のベラルーシ大統領アレクサンドル・ルカシェンコは、「女性が大統領になるのはふさわしくない」と公言し、女性に対する差別的な言動も目立ちました。アムネスティ・インターナショナルは、ベラルーシにおける反対運動家女性に対する差別的な扱いを非難し、性的暴力の脅しや子供たちの安全に対する懸念を指摘しました。

政治的見解と支持

ツィハノウスカヤは、大統領選への出馬は、夫を刑務所から解放し、自由で公正な選挙を実現するための手段であると述べています。彼女は、ルカシェンコ政権が有力な政敵を排除した現在の選挙を不正であるとみなし、政権を獲得した際には、6ヶ月以内に透明で責任ある選挙を実施することを公約しました。

無所属で選挙戦を戦ったツィハノウスカヤでしたが、ベラルーシ国内の様々な反体制派から支持を得ました。ベラルーシ・キリスト教民主主義（BChD／BCD）をはじめ、ベラルーシ社会民主党（BSDP）、ベラルーシ統一市民党（AGP）など、多くの政党や団体が彼女を支持しました。また、2010年の大統領選挙に出馬した元大統領候補ミコライ・スタトケヴィチも彼女を支持しました。

選挙結果と亡命

2020年8月9日に行われた大統領選挙の結果、中央選挙管理委員会は、ルカシェンコ大統領が80.2％の票を獲得して当選したと発表しました。一方、ツィハノウスカヤの得票率は9.9％にとどまりました。しかし、この選挙結果に対し、ベラルーシ市民は不正選挙であると一斉に反発し、大規模な抗議運動が発生しました。

選挙後、ツィハノウスカヤは一時所在不明となりましたが、8月11日に隣国リトアニアに脱出したことが確認されました。その後、彼女は、大統領選挙の結果は不当であるとして、国の指導者として行動することを表明し、ベラルーシの民主化を求める運動を海外から牽引しています。

現在の活動

亡命後も、ツィハノウスカヤは国際社会に向けて、ベラルーシの現状を訴え続けています。彼女は、各国の政府や国際機関に対し、ベラルーシにおける人権侵害を非難し、民主的な選挙の実施を求めるよう働きかけています。また、ベラルーシ国内の政治犯の解放や、市民社会の支援にも力を入れています。

2022年には、その功績が認められ、ドイツのアーヘン市よりカール大帝賞を受賞しました。しかし、2023年3月には、ミンスクの裁判所から反逆罪などで懲役15年の有罪判決を言い渡され、同年6月には、ベラルーシ最高裁判所がこの判決を支持しました。

それでも、スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤは、ベラルーシの民主化を諦めることなく、世界中で活動を続けています。彼女の勇気と行動は、多くの人々に希望を与え、ベラルーシの未来を照らす光となっています。

関連情報：
アリス・ボータ 著、岩井智子, 岩井方男 訳『女たちのベラルーシ 革命、勇気、自由の希求』春秋社、2023年
関連項目：シャルヘイ・ツィハノウスキー、2020年ベラルーシ抗議運動

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